つつが虫病(叢林熱)

内科学 第10版 「つつが虫病(叢林熱)」の解説

つつが虫病(叢林熱)(リケッチア感染症)

(1)つつが虫病(tsutsugamushi disease,叢林熱scr­ub typhus)【⇨4-11-1)】
病原体
 オリエンチアツツガムシ(Orientia tsutsugamushi).
分布・疫学
 感染ダニ幼虫(ツツガムシ)のヒトへの刺咬により経皮感染し,高熱と紅斑性,丘疹状発疹をおもな臨床症状とし,ツツガムシの刺咬部の局所に水疱,膿疱潰瘍を形成する.
 神経症状として髄膜刺激症状がなく軽症の経過でも強い頭痛を訴えることが多く,解熱後も数日間頭痛が続くことがある.治療の遅れから重症化すると脳炎を併発する.①髄膜炎:頭痛,発熱と髄膜刺激症状を呈する.髄液は圧上昇,軽度から中等度の蛋白増加,糖正常,単核球優位の細胞数増加がある.②脳炎:発熱と意識障害,痙攣,四肢のミオクローヌスを呈し,髄膜刺激症状を伴う髄膜脳炎のことが多い.髄圧は圧上昇,中等度から高度の蛋白増加,糖正常,単核球優位の細胞増加がある.頭部CTでは脳溝の狭小化などびまん性の脳腫脹を認める.
診断
 持続する原因不明の発熱,発病1~3週間前の野外での生活歴,刺し口の証明,発疹などから本症を疑う.血清Orientia tsutsugamushi抗体の上昇で確診する.Proteus OKX株に対するWeil-Felix反応は陽性率50%程度と低く補助的に用いられるにすぎない.末梢血からのOrientia tsutsugamushi分離,病原リケッチアのDNA検出(PCR),特に後者は高感度で迅速な診断法として有名である.
治療
 第一選択薬はテトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン,200 mg/日).初期であれば経口でも十分有効である.テトラサイクリン系薬剤が使用できないときには,第二選択薬であるクロラムフェニコールを用いる.重症例には播種性血管内凝固症に対する処置などが必要である.[三浦義治・岸田修二]
■文献
川並 透,溝口次郎,他:オリエンチヤツツガムシ.日本臨牀 領域別症候群シリーズNo26神経症候群―その他の神経疾患を含めて―,pp532-534,日本臨牀社,大阪,1999.
Walker DH, Raoult D : Rickettsia and other spotted fever group Rickettsias: Rocky mountain spotted fever and other spotted fever. In :Principles and Practice of Infectious Diseases, 6th ed (Mandell GL, Bennett JE, et al eds), pp2287-2295, Elsevier Churchill Livingstone, Philadelphia, 2005.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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