日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツルギアブ」の意味・わかりやすい解説
ツルギアブ
つるぎあぶ / 剣虻
stiletto flies
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目アブ群ツルギアブ科Therevidaeの昆虫の総称。この科の昆虫は中形で、体と脚(あし)は細く、腹部は長い円錐(えんすい)形で上下にやや扁平(へんぺい)で剣形にとがる。頭部は半球形で単眼がある。複眼は雄では合眼的、雌では離眼的。触角の第1節は太くて長く、触角全長の2分の1の長さ。翅脈はアブ科に似るが、第3中脈は後方へ傾き、しばしば翅縁で第1肘脈(ちゅうみゃく)に接する。はねの基部後方には、胸弁はアブ科のようには発達しない。幼虫は細長いウジで、落葉中やその下の土中、または腐敗した倒木やキノコ中に生息し、ほかの昆虫の幼虫を捕食する。
代表種ヤマトツルギアブPsilocephala albataは、体長9～11ミリメートル、翅長7～9ミリメートル。体は灰白色粉で覆われる。触角の第1節は円筒形で灰白色、以下は黒色。後頭部は頬(きょう)部にかけて白色長毛を密生し、とくに雄に著しい。胸部背面には褐色の2対の縦条が走る。胸部側面は部分的に白色長毛を密生するが、とくに雄に著しい。はねは透明で、縁紋と翅脈は褐色。脚の基節は灰白色粉で覆われ、白色長毛を密生するが、そのほかは黄褐色、ただし雄の各腿節(たいせつ)は暗色を帯び、白色長毛を生ずるが、雌では前脚腿節背面と末端部、中脚と後脚との両腿節では末端部が、それぞれ暗色となる。腹部背面は雄では白色長毛を密生するが、雌では暗褐色で白色短毛を生じ、各節後縁は灰白色。本州、四国、九州に分布する。
［伊藤修四郎］