日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティニャーノフ」の意味・わかりやすい解説
ティニャーノフ
てぃにゃーのふ
Юрий Николаевич Тынянов/Yuriy Nikolaevich Tïnyanov
(1894―1943)
ソ連の小説家、文学研究家。ビテプスク県レジツァ市(現ラトビア共和国レゼクネ市)の医師の家に生まれる。ペテルブルグ大学のベンゲーロフ・ゼミに学ぶ。埋もれたデカブリストの詩人キュヘリベーケルの研究で頭角を現した。傾向間の闘争に文学現象の進化をみる立場から、19世紀前半とくに20年代のロシア文学の研究を試み、オポヤーズ(詩語研究会)に加わって詩語の特性をフォルマリズムの立場から検討し、『擬古主義者と革新者』(1929)、『詩語の問題』(1924)などを著した。小説にも豊富な知識と資料を駆使し、三部作ともいうべき『キューフリャ』(1925)、『ワジル・ムフタールの死』(1929)、『プーシキン』(1935~43、未完)などの歴史小説により科学と文学の断絶を乗り越える境地を開いた。
[島田 陽]
『島田陽訳『デカブリスト物語』(『20世紀ロシア小説6』所収・1973・白水社)』▽『水野忠夫・大西祥子訳『詩的言語とは何か』(1985・せりか書房)』