オポヤーズ(その他表記)Opoyaz

改訂新版 世界大百科事典 「オポヤーズ」の意味・わかりやすい解説

オポヤーズ
Opoyaz

1916年ごろロシアのペトログラードで成立した〈詩的言語研究会〉のことで,詩学と言語学を根底に置くロシア・フォルマリズム批評運動の一翼を担ったグループ。V.B.シクロフスキーB.M.エイヘンバウムYu.N.トゥイニャーノフ,ヤクビンスキーL.P.Yakubinskii(1892-1945),ポリワーノフE.D.Polivanov(1891-1938)らが参加。未来派の芸術運動と関連をもちつつ,文学作品を文学以外の要素に還元する素材としていた従来の批評を拒否して文学の自律性を主張し,〈文学の科学〉の確立を志向し,文学作品の主題構成や文体や構造を分析し,言語表現の方法の面から批評を行おうとした。詩的言語と日常の言語の区別からはじめ,文学の構造の概念,文学史の検討に進み,革命後の批評の主流を占めたが,20年代の後半には〈形式主義〉として批判され,30年には運動としては終息。シクロフスキー《散文の理論》(1924),トゥイニャーノフ《詩の言葉の問題》(1924)などの著作はこのグループの成果で,現代の構造主義,記号学に影響を与えている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オポヤーズ」の意味・わかりやすい解説

オポヤーズ
おぽやーず
Опояз/Opoyaz

詩的言語研究会Общество изучения поэтического языкаの略称モスクワ言語学サークルとともに、ロシア・フォルマリズム運動を担った。ペテルブルグ(現サンクト・ペテルブルグ)を拠点としたオポヤーズは、シクロフスキー、エイヘンバウム、ティニャーノフらの文芸学者と、ポリバノフ、ヤクビンスキーらの言語学者からなり、斬新(ざんしん)な詩学、詩的言語論を展開した。その成立時期については種々の説があるが、最初の出版物としては、シクロフスキー著『言葉の復活』(1914)があげられる。すでにそこでは、芸術の手法とは事物を異化・非日常化する手法であるとの考えが鮮明に打ち出されている。その後もオポヤーズは『詩学――詩的言語論集』をはじめ、多くの著作を公にしてゆくが、元来、組織的な集団というよりも、出入り自由のサークル的性格が強く、モスクワ言語学サークルや未来派詩人たちとの交流も活発であった。フォルマリズム批判の高まった1920年代なかばに解散している。

桑野 隆]

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