ティピ
tipi
北アメリカの平原インディアンが住居として用いた円錐形テント。tepeeとも書く。大平原はミシシッピ川からロッキー山脈におよぶ広大な地域で,ブラックフット族をはじめ多くの部族が生活していたが,野牛(バイソン)の群れを追って集団狩猟をしていた点は共通している。ティピは松かモミの木3~4本を軸にし,補助の材を加えて円錐形の骨組みを作る。これに頂部からおもりをおろして固定する。骨組みに野牛の皮をまきつけ,ピンでしっかりとめる。頂部の布は長い棒で開閉し,天窓と煙出しになる。皮の天幕には獲物の絵や紋章などが描いてある。平面は円形で中央に炉がある。入口正面の奥が主人の座になっている。ティピは約20分で組み立てられるといわれ,また簡単に分解して移動できる。19世紀末,野牛は絶滅に瀕し,平原インディアンの伝統的生活も崩壊した。
執筆者:杉本 尚次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のティピの言及
【アメリカ・インディアン】より
…河岸段丘上に散在する半地下式の竪穴住居と菜園的な農耕地からなる小集落が散在し,狩猟のおりにはイヌにトラボイとよぶ軽便な運搬具を引かせて荷物の輸送をした。 スペイン人の進出につれて南西部に導入されたウマが大平原地方にも取り入れられると,伝統的な大平原の農耕社会は,ウマの機動力を利用するバイソン狩猟に基礎をおく遊動的社会になり,住居も半円錐形のティピに変わった。そのころ,東部地方に植民地を建設したヨーロッパ人と毛皮交易に従事していた東部森林地帯の原住民の一部も,枯渇する小動物を求めて西方に移動し,大平原地方に進出した。…
【シャイアン族】より
…人口は約5000人(1970)で,モンタナ州とオクラホマ州の保留地に住む。 伝統的には円錐形の大型テント([ティピ])に住む季節的移動民で,バイソンが食料,衣類,テント,道具類の原材料を供給した。婚姻後の居住形態は妻方居住で,母系のバンドが外婚単位をなしていた。…
【住居】より
…こうした簡易な住居では,しばしば住居づくりは主婦の仕事であり,手近の小枝や草を集めて数日以上かけてゆっくりつくられる。また北アメリカのカナダ内陸部や大平原インディアンの間に見られる[ティピ]と呼ばれる円錐形テントもトナカイやバッファローの群れを追う移動的な狩猟生活への適応である。この円錐形テントは北アジアにまで広がる分布を示しており,そのテント地として獣皮や樹皮が用いられている。…
【スー族】より
…女性用の衣類はスカート,すね当て,ポンチョ様の上着,モカシン,バイソンの毛皮の外衣などである。住居はバイソンの毛皮製の円錐形テント=[ティピ]で,冬には疎林の中に,夏には平原に張られた。ティピの中ではヤナギ製の背もたれが休息・睡眠用に用いられた。…
※「ティピ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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