改訂新版 世界大百科事典 「ディオニシー」の意味・わかりやすい解説
ディオニシー
Dionisii
生没年:1440ころ-1502ころ
ロシアのイコン画家。15世紀の後半に,A.ルブリョフの後をうけてモスクワ派絵画を発展させた。明確な年記と署名に裏づけられる唯一の作品として,ボログダ州のキリーロフ市付近のフェラポント修道院のウスペンスキー大聖堂に息子フェオドーシーFeodosii(1470ころ~16世紀初め)と制作した壁画の大作(1500-01)がある。そのほか,トレチヤコフ美術館蔵の3点のイコン--《キリストの磔刑》(1500ころ)および〈府主教アレクセイ伝〉〈府主教ピョートル伝〉--も,その作風から,彼の手になるものとされている。いずれも洗練された明るい色彩と優美な姿態の動きによって,繊細な感覚と深い精神性の融合を実現せしめた作風を示し,後進に大きな影響を及ぼした。
執筆者:高橋 榮一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報