ルブリョフ(その他表記)Andrei Rublyov

改訂新版 世界大百科事典 「ルブリョフ」の意味・わかりやすい解説

ルブリョフ
Andrei Rublyov
生没年:1370ころ-1430ころ

ロシアイコン画家。モスクワクレムリンブラゴベシチェンスキー聖堂イコノスタシスのうち,〈救世主〉(1405)など一部のイコンが,記録に伝えられる最も早い作品で,ウラジーミルウスペンスキー大聖堂壁画がこれに次ぐ。後にセルギエフ・ポサードのトロイツェ・セルギー大修道院で壁画やイコンの制作を重ね,モスクワのアンドロニコフ修道院(現,ルブリョフ記念初期ロシア美術館)で生涯を閉じた。洗練された色彩と流麗な筆致により,気品の高い瞑想的な世界を表現した。代表作にトレチヤコフ美術館の《トロイツァ(至聖三者=聖三位一体)》(15世紀初頭)がある。1967年ソ連の映画監督タルコフスキーAndrei Tarkovskii(1932-86)により,その生涯が映画化されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルブリョフ」の意味・わかりやすい解説

ルブリョフ
るぶりょふ
Андрей Рублёв/Andrey Rublyov
(1360/70―1430)

ロシアの画僧。中世ロシアの生んだ最大の画僧であるが、その若いころの伝記的資料は存在しない。しかし、若いルブリョフがモスクワのクレムリンの聖堂ギリシアのイコン画家フェオファン・グレックやその弟子たちのフレスコ画を見る機会があったことは容易に想像される。事実、1405年にはクレムリンのブラゴベシチェンスキー聖堂で、フェオファン・グレックやプローホルとともに聖堂の壁画やイコンの飾り付けに参加している。その後、08年にはウラジーミルのウスペンスキー聖堂の壁画を描いたが、今日ルブリョフの名を不朽のものとしているのはイコン『聖三位(さんみ)一体』によるといっても過言ではない。このイコンはロシア・イコンの美的世界の頂点にたつもので、その後のロシア・イコンに与えた影響も計り知れないものがある。

木村 浩]

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百科事典マイペディア 「ルブリョフ」の意味・わかりやすい解説

ルブリョフ

ロシア中世のイコン画家。伝記不詳。モスクワの修道僧で,ノブゴロド派画風と古典様式を融合して宗教的感情の表現を深め,モスクワ派の祖とされる。イコンの《聖三位一体》(1410年頃,モスクワ,トレチヤコフ美術館蔵)はロシア絵画の傑作とされる。ほかにウラジミルのウスペンスキー聖堂などの壁画がある。その生涯は映画監督タルコフスキーによって1967年に映画化された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルブリョフ」の意味・わかりやすい解説

ルブリョフ
Rublëv, Andrei

[生]1360/1370
[没]1430.1.29.
ロシアのイコン画家。コンスタンチノープルからロシアに来たギリシア人,フェオファン・グレクという大画家のもとで働き,かなりあとに修道士となった。 14世紀のビザンチン美術の精神性を重要視した。作品としてはイコン『聖三位一体』 (1410頃,トレチヤコフ国立美術館) がある。

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世界大百科事典(旧版)内のルブリョフの言及

【ウラジーミル】より

…同じ様式の作例に,市内のウスペンスキー大聖堂(1189)とドミトリエフスキー聖堂(1197)がある。前者の堂内の壁画の一部には,同時代のギリシア人もしくは土地の弟子の筆になる聖人像や,15世紀初頭のルブリョフによる〈最後の審判〉,また後者の堂内には,明らかに当代ギリシア人画家の手になる〈最後の審判〉の図が残る。クニャギーニン女子修道院内のウスペンスカヤ聖堂(15~16世紀)は,ロシアの聖堂に多い3層の蓮弁状破風を備え,堂内の壁画は同時代の豊富な図像で知られる。…

【ロシア・ソビエト美術】より

…豊かな技量と深い知識をもったフェオファン・グレクはノブゴロド,モスクワを中心とするイコン画家たちに多くの刺激を与える。モンゴルの圧政からの解放の兆しが見え,モスクワ公国が国内的統一をすすめていた15世紀初めに,モスクワ近郊修道院出身と推定される修道士A.ルブリョフが,イコンとフレスコの最高傑作を残した。代表作《聖三位一体》で知られるように,彼は宗教哲学的な象徴性をもった神秘的で優美な画風を確立した。…

※「ルブリョフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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