化学辞典 第2版 の解説
デバイ-ファルケンハーゲン効果
デバイファルケンハーゲンコウカ
Debye-Falkenhagen effect
高周波交流電場下で,周波数の増加とともに電解質溶液の電気伝導率が増大する現象.すなわち,伝導率の周波数分散効果で,1928年P.J.W. Debye(デバイ)とH. Falkenhagenにより理論的に指摘された.直流あるいは低周波数(数千サイクル以下)の交流電場においては,イオンの移動に伴い,そのイオンの周囲のイオン雰囲気に非対称性(緩和効果)が現れ,移動度の減少が生じる.これに対し,交流電場の周波数が高くなって,イオン雰囲気の緩和時間と同程度あるいはそれ以上になると,イオンの周期的移動の各瞬間ごとにイオン雰囲気の非対称性が生じる余裕がなくなり,緩和効果が消滅してその分だけ電気伝導率が増加する.これがデバイ-ファルケンハーゲン効果の生じる原因である.L. Onsager(オンサガー)によれば,電解質溶液の電気伝導率の濃度変化は,上記緩和効果と電気泳動効果の両者により与えられるが,高周波電場下では緩和効果のみ消滅するので,デバイ-ファルケンハーゲン効果による電気伝導率の増加は,両効果とも消滅するウィーン効果の場合ほどいちじるしくなく,周波数の増大に伴って到達する最大値は,無限大希釈溶液の示す極限値より小さい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報