時間の経過とともに流れる向きが変わらない電流をいう。直流電流の略。DCと略される場合が多い。一般に、向きと同時に大きさも一定の状態をさす場合が多く、そのときは、電流の向きは変わらず大きさが変わる状態を脈流といい区別する。直流という語は形容詞としても使用される。たとえば電池の電圧のように、極性(+-)が変わらない電圧を直流電圧という。
電気が初めて実用化されたのは、直流電圧を発生する電池の発明によっている。しかし電池は、1個当りの電圧がたかだか2ボルト程度であったため、高電圧を得るためには多数の電池を直列に接続しなければならず、また、大電流を得るためには電池の容積を大きくしなければならないうえ、寿命が短いなどの欠点をもっていた。のち直流発電機が発明されてからは、これらの欠点が除かれ、電灯や動力源として直流が広く使われた時期があった。一方、交流は変圧器を使って電圧を容易に変換できるため、しだいに交流の利用が盛んになった。さらに三相交流が実用化されて、エネルギー源としての電気の利用は、交流が主力になった。現在、変圧(電圧の変換)が容易なため、発電、送配電には交流を用い、機器内の直流を必要とする直前で半導体回路により直流に変換している。なお、直流送電ではリアクタンスによる電圧降下がないなどの、交流よりも優れた点もある。
[布施 正・吉澤昌純]
大きさおよび方向が一定の電流。大きさおよび方向が一定の電圧,すなわち直流電圧direct voltageのこともいう。大きさが変化するが方向が変わらない電流(脈流)や電圧(脈圧)も直流の一種と考えてよい場合が多い。化学電池や太陽電池,MHD発電,燃料電池などの各種の直接発電はすべて直流を発生する。商用交流電源から直流を得るには整流器を用いるが,これの出力は脈流となるので真の直流に近づけるためには平滑フィルターを必要とする。直流が利用されている分野としては,直流電動機の優れた制御性を利用している製鉄所圧延機,高速エレベーター,電気鉄道があるが,前2者では交流化が進行中であり,鉄道にもそのきざしが見えている。電動機の種類にかかわらず,地下鉄,郊外電車,モノレールなどに直流が用いられるのは,同じ電圧を用いた場合,電圧降下や誘導障害が少なくできるからである。電気分解,電気めっき,電気精錬などの電気化学分野では,正極と負極とで起こる異なる電気化学反応を用いるため,原理的に直流(脈流でよい)でなければならない。電子回路も使用するトランジスターなどの素子が,ほとんどすべて電流の極性が定まっているため,直流を用いなければならず,テレビ受像機などは電源の交流を整流して,内部ではもっぱら直流を用いている。
執筆者:曾根 悟
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…誘電体の分極の時間的変化が電流密度の性質をもつ(これに対応する電流を分極電流という)のと似た現象で,真空中の電場が変化する場合にも生ずる。 また電流の時間的な変化に関しては,つねに一つの方向に流れる電流を直流といい,その中で方向は変わらないが強さの変わるものを脈流,強さも一定の場合を定常電流という。それに対して時間とともに頻繁に向きを変える電流を交流といい,1秒間の向きの変化を周波数という。…
※「直流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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