日本大百科全書(ニッポニカ) 「トウゴロウメダカ」の意味・わかりやすい解説
トウゴロウメダカ
とうごろうめだか
Smith's priapium fish
[学] Phenacostethus smithi
硬骨魚綱トウゴロウイワシ目トウゴロウメダカ科の淡水魚。タイのバンコク付近に多い。外見はメダカに似ていて胸びれが高い位置にある。口を著しく突出させることができる。体は小形で2センチメートル、背側は暗いオリーブ色をしているが、頭頂に鮮やかな黄色の小域がある。側方は透明状態で内臓が外から透けて見える。第1背びれは体の中央にあり、1本の棘(とげ)しかない。第2背びれは小さいが、臀(しり)びれはよく発達していて1棘(きょく)12軟条からなる。
腹びれはないが、雄ではそれを支える骨が頭胸部によく発達して、ほかの骨とともに特異な形の交接器priapiumをつくり、雌の体を固定して精子を注入する。雌の生殖孔は頭胸部に開き、盾状の1枚の鱗(うろこ)で覆われている。産卵は5~12月の雨期になされるが、泥水でも受精がうまくいくように特異な交接器をもつようになった。淡水の貯水池、灌漑(かんがい)水路、小さな運河など濁りの多い水中にすむ。小さな群れをなして水面近くを泳ぎ、動物プランクトンを食べる。この仲間は頭部に生殖器をもつ魚として有名である。
[落合 明・尼岡邦夫]