化学辞典 第2版 「トリス鉄酸カリウム」の解説
トリス(オキサラト)鉄(Ⅲ)酸カリウム
トリスオキサラトテツサンカリウム
potassium tris(oxalato)ferrate(Ⅲ)
K3[Fe(C2O4)3](437.20).IUPAC体系名はトリス(ジオアト)鉄(Ⅲ)酸カリウム.通称,シュウ酸鉄(Ⅲ)カリウム,または,シュウ酸第二鉄カリウムとよばれている.Fe(OH)3とシュウ酸水素カリウムとの水溶液を加熱するか,または FeⅢ塩と過剰のシュウ酸アルカリ金属との水溶液を加熱すると生成する.濃縮すると三水和物が析出する.緑色の結晶.FeⅢのまわりは,3個のC2O42-のうち6個のOがキレート配位し,六配位正八面体型である.Fe-O2.04 Å.密度2.14 g cm-3.磁気モーメント5.96μB.三水和物は空気中で風解する.加熱すると120 ℃ で無水塩になり,230 ℃ で分解がはじまりCO2が発生する.光学異性体は得られているが,室温でもすみやかにラセミ化する.水に可溶.水溶液はSCN-では着色しない.水酸化カリウム水溶液でFe(OH)3を沈殿する.光照射(λ < 450 nm)により FeⅢ→ FeⅡの還元が起こる.
この光反応は,光学光量計(オキサラト光量計)に利用されている.感光性を利用して,NH4塩(通称,シュウ酸鉄(Ⅲ)アンモニウム)は,青写真用感光剤として用いられていた.「蓚酸塩類及びこれを含有する製剤」は毒物及び劇物取締法・劇物指定.[CAS 5936-11-8:三水和物][CAS 14883-34-2:無水塩][CAS 14221-47-7:NH4塩]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報