チタン酸バリウム(読み)チタンサンバリウム(その他表記)barium titanate

デジタル大辞泉 「チタン酸バリウム」の意味・読み・例文・類語

チタンさん‐バリウム【チタン酸バリウム】

二酸化チタン炭酸バリウムとともに融解すると得られる白色結晶強誘電体の一。圧電効果を示し、音響機器のピックアップ磁器コンデンサーなどに使用化学式BaTiO3 メタチタン酸バリウム。略して「チタバリ」ともいう。

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精選版 日本国語大辞典 「チタン酸バリウム」の意味・読み・例文・類語

チタンさん‐バリウム【チタン酸バリウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( バリウムは[ドイツ語] Barium ) チタン酸のバリウム塩。化学式 BaTiO3 無色微結晶。等軸晶系の灰チタン石型構造のものは誘電率がきわめて高く、また常温で著しい圧電現象を示す。磁器コンデンサー、音響機器のピックアップなど電気材料として用いられるほか白色顔料にも用いる。メタチタン酸バリウム。

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改訂新版 世界大百科事典 「チタン酸バリウム」の意味・わかりやすい解説

チタン酸バリウム (チタンさんバリウム)
barium titanate

酸化チタン(Ⅳ)バリウムともいう。化学式はBa2TiO4またはBaTiO3前者の式のものをオルトチタン酸バリウム後者をメタチタン酸バリウムと呼ぶが,実際はBa2⁺,Ti4⁺およびO2⁻から成るイオン結晶(複酸化物)で,TiO44⁻,TiO32⁻のような独立の陰イオンは存在しない。後者のほうがよく知られているので,以下これについて述べる。炭酸バリウムと二酸化チタンの固相反応,またはオキサラトチタン酸バリウムBaTiO(C2O42・4H2Oのような錯体の熱分解によって無色の微結晶として得られ,単結晶として成長させることもできる。種々の結晶形のものが得られるが,常温では正方晶系ペロブスカイト型構造のものが安定。120℃以下では強誘電体である。これは,Ba2⁺イオンがTi4⁺イオンにくらべてはるかに大きいため,それらがO2⁻イオンとともに配列して結晶格子を作るとき,Ti4⁺は6個のO2⁻が作る大きな空洞の中に浮遊しているような形になり,外界から電場がかかると容易に空洞の一方へ引き寄せられるので,結晶全体として大きな電気分極が生ずるためである。また,これに関連して著しい圧電気現象も観察される。これらの現象の研究のよい対象となるほか,誘電率が異常に高いことを利用して小型・大容量の磁気コンデンサーに,また圧電気現象を利用して音響機器に利用される。白色顔料にもなる。化学的にきわめて安定で,熱希硝酸の作用,アルカリ融解などによっても容易に変化しない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チタン酸バリウム」の意味・わかりやすい解説

チタン酸バリウム
ちたんさんばりうむ
barium titanate

チタン酸(酸化チタン(Ⅳ)水和物TiO2nH2Oを一般にこのようによぶ)のバリウム塩。チタン(Ⅳ)酸バリウムともいう。二つの異性体が知られている。

(1)オルトチタン酸バリウム 化学式Ba2TiO4、式量386.62。炭酸バリウムと酸化チタン(Ⅳ)をモル比2対1で混ぜ、約1270℃に加熱して得られる暗赤色粉末。正四面体形のチタン酸イオンとバリウムイオンからなるイオン結晶である。

(2)メタチタン酸バリウム 化学式BaTiO3、式量233.26。正式名称は三酸化バリウムチタン。混合比を変えた高温固相反応あるいはシュウ酸バリウムチタニル四水和物(シュウ酸バリウムオキシドチタン(Ⅳ)四水和物)Ba(TiO)(C2O4)2・4H2Oの熱分解で得られる無色結晶で、普通、チタン酸バリウムといえばこれをさす。低温から高温にかけて下記のように相転移する。


 室温付近では正方晶系、120℃で立方晶系となり、それらは灰チタン石(ペロブスカイト)型構造をとるが、正方晶系相が強誘電体となる。各晶系ともTiO6正八面体の面共有構造をとり、チタン酸イオンは存在せず、複酸化物となる。誘電率が大きく圧電性があり、磁器コンデンサー、圧電素子などに用いられる。

[岩本振武]

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百科事典マイペディア 「チタン酸バリウム」の意味・わかりやすい解説

チタン酸バリウム【チタンさんバリウム】

オルトチタン酸バリウムBa2TiO4とメタチタン酸バリウムBaTiO3があり,後者がよく知られている。無色の結晶性粉末。温度により各種の結晶系をとるが,常温では正方晶系。キュリー温度120℃以下で,強誘電性。強誘電性はTi4(+/)とO2(-/)とが互いに少しずつずれて示されるものとされる。著しい圧電効果を示す。磁気コンデンサー,音響機器,白色顔料などに使用。酸化チタンと炭酸バリウムを反応させつくる。
→関連項目圧電気強誘電体セラミックスニューセラミックス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チタン酸バリウム」の意味・わかりやすい解説

チタン酸バリウム
チタンさんバリウム
barium titanate

酸化チタンと酸化バリウムから成る化合物で数種類ある。普通は1:1の化合物,酸化チタン (IV) バリウム BaTiO3 をさす。高純度物質はチタニルシュウ酸バリウムを灼熱して製造する。温度により5つの晶系を転移する。キュリー温度は 120℃で,これ以下では強誘電体となる。化学的に安定で,誘電率が大きいので磁器コンデンサとして用いられる。また磁器としても外部電場で分極させると圧電性を示すので,音響機器などの圧電素子としても用いられる。また白色顔料としての用途もある。

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化学辞典 第2版 「チタン酸バリウム」の解説

チタン酸バリウム
チタンサンバリウム
barium titanate

BaTiO3,Ba2TiO4,Ba3Ti2O7などがあるが,普通は,もっともよく知られている三酸化チタン(Ⅳ)バリウムBaTiO3をさす.[別用語参照]酸化チタン(Ⅳ)バリウム

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のチタン酸バリウムの言及

【セラミック半導体】より

…いずれも酸素分圧が変化するとδが変化し,ひいては導電率も変化する。微量成分を含むものの代表例にはチタン酸バリウムBaTiO3(微量の酸化ランタン(III)La2O3)がある。半導性を示すBaTiO3は,低温では低抵抗,BaTiO3の相転移温度以上では高抵抗であるので,抵抗加熱素子として,布団乾燥機,ヘアドライヤーなどに使われている。…

【チタン酸バリウム磁器】より

…チタン酸バリウムBaTiO3(メタチタン酸バリウム)を主成分とする磁器で,主としてコンデンサー材料あるいは圧電材料として用いられる。チタン酸バリウムはペロブスカイト(灰チタン石CaTiO3)型構造をとり,1460℃以上で六方晶,1460~120℃で立方晶,120~0℃で正方晶,0~-80℃で斜方晶,-80℃以下で菱面体晶となる。…

※「チタン酸バリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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