日本大百科全書(ニッポニカ) 「チタン酸バリウム」の意味・わかりやすい解説
チタン酸バリウム
ちたんさんばりうむ
barium titanate
チタン酸(酸化チタン(Ⅳ)水和物TiO2・nH2Oを一般にこのようによぶ)のバリウム塩。チタン(Ⅳ)酸バリウムともいう。二つの異性体が知られている。
(1)オルトチタン酸バリウム 化学式Ba2TiO4、式量386.62。炭酸バリウムと酸化チタン(Ⅳ)をモル比2対1で混ぜ、約1270℃に加熱して得られる暗赤色粉末。正四面体形のチタン酸イオンとバリウムイオンからなるイオン結晶である。
(2)メタチタン酸バリウム 化学式BaTiO3、式量233.26。正式名称は三酸化バリウムチタン。混合比を変えた高温固相反応あるいはシュウ酸バリウムチタニル四水和物(シュウ酸バリウムオキシドチタン(Ⅳ)四水和物)Ba(TiO)(C2O4)2・4H2Oの熱分解で得られる無色結晶で、普通、チタン酸バリウムといえばこれをさす。低温から高温にかけて下記のように相転移する。
室温付近では正方晶系、120℃で立方晶系となり、それらは灰チタン石(ペロブスカイト)型構造をとるが、正方晶系相が強誘電体となる。各晶系ともTiO6正八面体の面共有構造をとり、チタン酸イオンは存在せず、複酸化物となる。誘電率が大きく圧電性があり、磁器コンデンサー、圧電素子などに用いられる。
[岩本振武]