酸化チタン(Ⅳ)バリウムともいう。化学式はBa2TiO4またはBaTiO3。前者の式のものをオルトチタン酸バリウム,後者をメタチタン酸バリウムと呼ぶが,実際はBa2⁺,Ti4⁺およびO2⁻から成るイオン結晶(複酸化物)で,TiO44⁻,TiO32⁻のような独立の陰イオンは存在しない。後者のほうがよく知られているので,以下これについて述べる。炭酸バリウムと二酸化チタンの固相反応,またはオキサラトチタン酸バリウムBaTiO(C2O4)2・4H2Oのような錯体の熱分解によって無色の微結晶として得られ,単結晶として成長させることもできる。種々の結晶形のものが得られるが,常温では正方晶系,ペロブスカイト型構造のものが安定。120℃以下では強誘電体である。これは,Ba2⁺イオンがTi4⁺イオンにくらべてはるかに大きいため,それらがO2⁻イオンとともに配列して結晶格子を作るとき,Ti4⁺は6個のO2⁻が作る大きな空洞の中に浮遊しているような形になり,外界から電場がかかると容易に空洞の一方へ引き寄せられるので,結晶全体として大きな電気分極が生ずるためである。また,これに関連して著しい圧電気現象も観察される。これらの現象の研究のよい対象となるほか,誘電率が異常に高いことを利用して小型・大容量の磁気コンデンサーに,また圧電気現象を利用して音響機器に利用される。白色顔料にもなる。化学的にきわめて安定で,熱希硝酸の作用,アルカリ融解などによっても容易に変化しない。
執筆者:曽根 興三
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チタン酸(酸化チタン(Ⅳ)水和物TiO2・nH2Oを一般にこのようによぶ)のバリウム塩。チタン(Ⅳ)酸バリウムともいう。二つの異性体が知られている。
(1)オルトチタン酸バリウム 化学式Ba2TiO4、式量386.62。炭酸バリウムと酸化チタン(Ⅳ)をモル比2対1で混ぜ、約1270℃に加熱して得られる暗赤色粉末。正四面体形のチタン酸イオンとバリウムイオンからなるイオン結晶である。
(2)メタチタン酸バリウム 化学式BaTiO3、式量233.26。正式名称は三酸化バリウムチタン。混合比を変えた高温固相反応あるいはシュウ酸バリウムチタニル四水和物(シュウ酸バリウムオキシドチタン(Ⅳ)四水和物)Ba(TiO)(C2O4)2・4H2Oの熱分解で得られる無色結晶で、普通、チタン酸バリウムといえばこれをさす。低温から高温にかけて下記のように相転移する。
室温付近では正方晶系、120℃で立方晶系となり、それらは灰チタン石(ペロブスカイト)型構造をとるが、正方晶系相が強誘電体となる。各晶系ともTiO6正八面体の面共有構造をとり、チタン酸イオンは存在せず、複酸化物となる。誘電率が大きく圧電性があり、磁器コンデンサー、圧電素子などに用いられる。
[岩本振武]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
BaTiO3,Ba2TiO4,Ba3Ti2O7などがあるが,普通は,もっともよく知られている三酸化チタン(Ⅳ)バリウムBaTiO3をさす.[別用語参照]酸化チタン(Ⅳ)バリウム
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…いずれも酸素分圧が変化するとδが変化し,ひいては導電率も変化する。微量成分を含むものの代表例にはチタン酸バリウムBaTiO3(微量の酸化ランタン(III)La2O3)がある。半導性を示すBaTiO3は,低温では低抵抗,BaTiO3の相転移温度以上では高抵抗であるので,抵抗加熱素子として,布団乾燥機,ヘアドライヤーなどに使われている。…
…チタン酸バリウムBaTiO3(メタチタン酸バリウム)を主成分とする磁器で,主としてコンデンサー材料あるいは圧電材料として用いられる。チタン酸バリウムはペロブスカイト(灰チタン石CaTiO3)型構造をとり,1460℃以上で六方晶,1460~120℃で立方晶,120~0℃で正方晶,0~-80℃で斜方晶,-80℃以下で菱面体晶となる。…
※「チタン酸バリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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