日本大百科全書(ニッポニカ) 「トレイルランニング」の意味・わかりやすい解説
トレイルランニング
とれいるらんにんぐ
trail running
山や森林にある登山道や林道などを走るスポーツ。トレイルラン、トレランともいう。スポーツ競技のランニングの一種であるが、マラソンのように身体一つに近い状態で走る競技とは、走る道の違いのほか、装備の面でも異なっている。おもに山間部を走るため、標高差による気温や天候の変化、不測のけがなどを考慮し、救急用の治療セット、防寒着やレインウエア、ヘッドライト、水などの装備を小型のリュックサックに収納して携帯する。また、悪路が多いため、靴底に地面を噛(か)むような溝がある軽量で専用の靴を履く。日本トレイルランニング協会(JTRA=Japan Trail Running Association)によると、競技として規定されるコースの条件は以下の4点である。(1)走行コースの75%以上が未舗装路であること。(2)泥や木の根などの自然の障害物があること。(3)激しい高低差があること。(4)大自然の美しい景観が得られること。
ヨーロッパやアメリカでは未舗装路のランニング競技として、100年以上も前からクロスカントリーが行われてきた下地があり、アメリカでは2003年に全米陸上競技連盟(USATF=USA Track & Field)認定の最初のトレイルランニングの公式レースが開かれた。2009年には競技人口が480万人に達している。日本では市民マラソンや登山などの流行も影響し、2010年(平成22)ころから愛好者が急増しているが、2012年の時点で、日本陸上競技連盟はトレイルランニングを正式な競技種目として認定していない。また、狭い山道を大ぜいの競技者が走るため、環境保全の面で物議を醸すケースも起きている。しかし、日本でも定期的な競技大会が開催され、競技の認識やマナーの意識も着実に浸透している。富士山周辺や信越地域、東京近郊などを拠点に走行距離が40キロメートル未満の定期的な大会が増えており、100キロメートル以上の距離を走破するトレイルレースも行われている。2012年には156キロメートルに及ぶ富士山麓(さんろく)一周コースを走る、第1回「ウルトラトレイル・マウントフジ」(UTMF=Ultra-Trail Mt. Fuji)が開催された。
[編集部]