日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロスカントリー競走」の意味・わかりやすい解説
クロスカントリー競走
くろすかんとりーきょうそう
cross-country race
陸上競技の1種目。スキーの距離競技でも「クロスカントリー」の語を使う。陸上競技の場合は、競技場のトラックを離れ、森、野原、丘などを走る長距離競走で、断郊競走ともいう。陸上競技のシーズンが終了した冬季期間に行うのが望ましいとされ、コースは可能な限り草で覆われた自然の障害物がある広い地域または森林地帯で設定しなければならないと決められている。トラックのオフシーズンに長距離選手がトレーニングの一助として参加するケースも多い。
19世紀後半、イギリスの子供の追いかけっこの一つであるペーパーチェイスpaper-chaseにヒントを得て始まったといわれ、1877年に第1回のイギリス選手権大会が開かれ、1903年には国際クロスカントリー連盟が設立された。オリンピックでも1912年の第5回ストックホルム大会から陸上種目となり、1924年の第8回パリ大会まで続いたが、パリ大会が炎天下のレースとなり倒れる選手が続出したこともあって以後中止となった。
1973年から国際陸上競技連盟(ワールドアスレティックス(世界陸連)の前身)主催の世界クロスカントリー選手権が2011年までは毎年、それ以降は2年に1回行われている。距離は決まっておらず、2019年大会(デンマークのオーフス)は1周約2キロメートルの周回コースを、シニアの男女は5周、ジュニアの男子は4周、女子は3周、男女混合リレーは4周で行われた。個人戦と団体戦があり、団体戦は各競技者の順位を得点とし、チームの合計点で勝敗を争う。コースによって条件が違うため、記録は公認されない。
日本では、日本陸上選手権大会クロスカントリー競走(福岡、海の中道(なかみち)海浜公園)や全日本びわ湖クロスカントリー大会(滋賀、希望が丘文化公園)が開催されており、福岡コースでは2006年(平成18)に世界クロスカントリー選手権が開かれた。
クロスカントリー競走とよく似たレースとしては、さまざまな種類の地形や環境で行うトレイルレースや、コースに大きな高低差があるマウンテンレースがある。
[加藤博夫・中西利夫 2020年4月17日]