改訂新版 世界大百科事典 「ドイツ福音主義教会」の意味・わかりやすい解説
ドイツ福音主義教会 (ドイツふくいんしゅぎきょうかい)
Evangelische Kirche in Deutschland
ドイツ連邦共和国(旧,西ドイツ)にあるプロテスタント諸教会の連合組織。宗教改革以後,ドイツのキリスト教会は,各領邦(ラント)ごとに,領主を首長とする統一組織となり,ルターに始まるルター派,カルバンの伝統に立つ改革派のいずれかとなった。のち両派の合同による合同派教会も生まれたが,政治形態が大きく変わっても,この領邦教会Landeskircheの形は変わらなかった。教会は国家から分離独立したが,公教育における宗教教育を行い,政府機関による教会税徴収等の特権を失ってはいない。領邦教会は,歴史的な,したがって現在の行政上の区分とは違う領域区分を持っている。第2次大戦後の1948年,全領邦教会の自立性をそこなうことなく,可能な限りの共同行動をするための連合体として,ドイツ福音主義教会(EKDと略称)を結成,共通の賛美歌を作り,社会奉仕活動や伝道上の協力をなし,国家と折衝している。17の領邦教会が加盟している。ドイツ統一前の東ドイツにある八つの領邦教会もかつてはこれに属していたが,69年以降離脱,ドイツ民主共和国福音主義教会連盟Bund der evangelischen Kirchen in der DDRを結成,独自の歩みを始めていた。なおいずれの場合も,昔からの領邦教会に属さぬバプティスト派,メソディスト派などの,いわゆる自由教会はこれに属してはいない。EKD所属の信徒数はドイツ統一前に約2700万である。
執筆者:加藤 常昭
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