日本大百科全書(ニッポニカ) 「ド・ジェンヌ」の意味・わかりやすい解説
ド・ジェンヌ
どじぇんぬ
Pierre-Gilles de Gennes
(1932―2007)
フランスの物理学者。パリ生まれ。パリ高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)を1955年に卒業。1955年から1959年まで、サクレー原子力研究センターで中性子散乱などの研究を続ける。1957年に博士。1961年から1971年までパリ南大学助教授ついで教授。1971年からはコレージュ・ド・フランス教授となる。
代表的な研究は、物質の「秩序」と「無秩序」についてである。たとえば磁石は、その磁石を構成する鉄原子やニッケル原子など一個一個のミクロの磁石が、秩序だって同じ方向を向けば全体として磁石の性質を示すが、ある温度を境にその秩序が崩れて無秩序状態になると、磁石の性質が失われる。パソコンの画面などにも使われている液晶も、棒状の細長い分子がわずかな電気で向きをかえることを利用してつくられている。この「秩序」と「無秩序」が物質の相転移によって切り替わるという理論を体系的にまとめた。さらに、磁石や液晶などの単純な物質を研究するために考え出されていた「秩序」と「無秩序」の理論が、もっと複雑な物質、たとえば高分子に対しても有効であることを発見し、学界に衝撃を与えた。「現代のアイザック・ニュートン」とも称された。これらの業績でノーベル物理学賞を、1991年に単独受賞した。
[馬場錬成 2018年9月19日]