改訂新版 世界大百科事典 「ナクシルスタム」の意味・わかりやすい解説
ナクシ・ルスタム
Naqsh-i Rustam
イランのファールス州にあるアケメネス朝およびササン朝ペルシアの遺跡。ナクシュ・イ・ルスタムともいう。ペルセポリスの北北西約6km,フサイン・クーḤusayn Kūh(〈フサイン山〉の意)の断崖に位置する。エラム時代の祭儀場面の浮彫が発見されており,付近に泉が存在していたことから,ペルシア帝国以前から宗教的聖地であったことが推定される。アケメネス朝時代には,ダレイオス1世以下4代の王墓が崖の中腹に掘り込まれ,これと相対して〈ゾロアスターのカーバ〉と呼ばれる高さ約12.6mの石造建築物(用途について拝火神殿,聖典所蔵庫,殯宮(ひんきゆう)の諸説がある)が建てられた。崖の突端にある1対の露天の拝火壇も,この時代に比定されている。ササン朝時代には,王墓の下の岩壁にアルダシール1世の王権叙任図,シャープール1世の対ローマ戦勝図など,ササン朝諸王の九つの浮彫が刻まれた。ダレイオス1世の王墓碑文,〈ゾロアスターのカーバ〉壁面のシャープール1世および祭司カルティールの碑文は史料として重要である。
執筆者:佐藤 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報