日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゾロアスター」の意味・わかりやすい解説
ゾロアスター
ぞろあすたー
Zoroaster
生没年不詳。古代ペルシアの宗教家、思想家。ゾロアスター教の開祖。ペルシア語でザラスシュトラZarathushtraという。ゾロアスターはギリシア語を介しての英語読み。紀元前600年ころの人とする説もあるが、彼自身の作になる讃歌(さんか)「ガーサー」の言語、形式、内容から紀元前1200年ころの人と推測される。しかし、定説はない。東北イランから南ロシアにかけて遊牧・半定住生活をしていたインド・イラン語族の一部族の祭司階級に生まれた。30歳でアフラ・マズダーによる啓示を受け、倫理性を尊ぶと同時にきわめて楽観的な新宗教(のちにゾロアスター教とよばれる)を開いた。故郷では受け入れられなかったので、40歳で伝道の旅に出、2年後、東北イランのバルフ地方を支配していたウイシュタースパ王の改宗に成功して、この信仰を広める契機をつくった。最初の結婚による娘を王の宰相ジャーマスパに嫁がせ、自らもジャーマスパの姪(めい)を三度目の妻として迎えて地歩を固めた。77歳まで信仰の発展に尽くしたが、対立部族の手によって暗殺されたといわれる。なお、ニーチェの『ツァラトゥストラ』はゾロアスターのドイツ語読みである。
[山本由美子 2018年6月19日]
『伊藤義教著『ゾロアスター研究』(1979・岩波書店)』▽『メアリー・ボイス著、山本由美子訳『ゾロアスター教』(1983・筑摩書房/講談社学術文庫)』▽『山本由美子著『マニ教とゾロアスター教』(1998・山川出版社)』▽『前田耕作著『宗祖ゾロアスター』(ちくま学芸文庫)』