カーバ(その他表記)Ka`ba

デジタル大辞泉 「カーバ」の意味・読み・例文・類語

カーバ(Kaaba)

立方体の意》サウジアラビア中西部の都市メッカハラームモスクにあるイスラム教の最も聖なる所。石造聖殿で、その壁に聖なる黒石が安置されている。「神の館」として、巡礼の目ざすところ。また、礼拝はこの方向に向かって行われる。カーバ神殿

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改訂新版 世界大百科事典 「カーバ」の意味・わかりやすい解説

カーバ
Ka`ba

メッカにあるイスラムの最も神聖なる神殿。カーバとは立方体を意味する。〈神の館Bayt Allāh〉ともいう。ムスリムは日に5回の礼拝を全世界からカーバに向かって行い,巡礼ハッジュとウムラ)をカーバ目指して行う。コーランではカーバの建設者はアブラハムとその子イシュマエルとされている。伝承によれば,ムハンマドの青年時代のカーバは,高さは人の背丈ほどで屋根もなかったが,火事で焼け落ちたので,ほぼ現在の形に建て直されたという。その後イブン・アッズバイルはカーバを拡張したが,その死後もとの形に戻され,1630年の改修を経て今日に及ぶ。

 現在,カーバは聖モスク中庭の中央に位置する。それは,大理石の基盤の上にある長さ約12m,奥行約10m,高さ約15mの石造りの建物で,その四隅はほぼ東西南北を指している。平屋根は北西に向かってゆるい勾配があり,雨どいに続く。北東に向かう面が正面で,その左端,建物の東に向かう角の地上約1.5mの所に,巡礼者が接吻する聖なる黒石がはめこまれている。正面の地上約2mの高さに入口があり,必要な時に,いつもは外されている階段をかけて内に入る。内部は大理石の敷石の床となり,3本の木の柱があって屋根を支えている。建物の外側面は1枚の絹布(キスワ)で覆われ,巡礼の期間だけ下部が巻き上げられる。入口の手前に〈アブラハムの立ち所Maqām Ibrāhīm〉があり,さらにその手前に〈シャイバ家Banū Shaybaの門〉と〈ザムザムZamzamの泉〉があり,巡礼者はこの聖なる泉の水を飲み,故郷へ持ち帰る風習がある。
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百科事典マイペディア 「カーバ」の意味・わかりやすい解説

カーバ

イスラムの最も重要な神殿。メッカ聖域の中央部にある石造り・方形(長さ約12m,奥行10m,高さ15m)の建物。カーバとは〈立方体〉を意味し,〈神の館〉とも呼ばれる。コーランでは,アブラハム(イブラーヒーム)とその息子イシュマエル(イスマーイール)が建てたとされる。正面は北東に面する。東側の隅に黒石がはめてあり,その反対側にザムザムの聖泉がある。イスラム以前には多くの偶像がまつられていたが,630年ムハンマドがメッカに入ったとき破壊された。イスラムではカーバをキブラ(礼拝の方向)と決め,ハッジュ(メッカ巡礼)はここを目標として行われる。
→関連項目サラートマフディー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーバ」の意味・わかりやすい解説

カーバ
かーば
Ka‘ba

アラビア半島のメッカにある立方体の神殿。イスラム教にとっては地上でのもっとも神聖な建造物で、イスラム教徒は、毎日5回のカーバに向かっての礼拝と、一生に最低一度のカーバへの巡礼が義務づけられている。イスラム教勃興(ぼっこう)以前からカーバは存在し、伝説では、『旧約聖書』に書かれているアブラハムが建立したことになっている。預言者ムハンマド(マホメット)は、自らの信仰をアブラハムのそれと同じであると説いて、カーバを神聖視した。現在は巨大な聖(ハラム)モスクの中庭の中央にあり、長さ約12メートル、奥行約10メートル、高さ約15メートルの石造りで1枚の布に覆われている。建物の一隅に聖なる黒石がはめ込まれ、巡礼者はそれに接吻(せっぷん)する。

[後藤 明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーバ」の意味・わかりやすい解説

カーバ
al-Ka`bah

メッカにある神殿の名称。方形の建物でその一隅に聖なる黒石がはめこまれている。イスラム前の時代からアラブの宗教の一中心で,多くの神々が祀られていた。 630年預言者ムハンマドは神殿内のすべての偶像を破壊した。コーラン第2章 127節によれば,カーバはイブラーヒーム (アブラハム) とイスマーイールによって基礎をおかれたことになっており,また第3章 96節ではカーバは地上につくられた最初の聖所とされている。イスラム教徒の礼拝の方向はこのカーバに向けられ,カーバへの巡礼はイスラム教徒の重要な義務の一つである。

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世界大百科事典(旧版)内のカーバの言及

【石】より

…ブラジルのカインガング族は,葬式の最後に,自分たちの身体に小石をなすりつけながら,石が不死であるように高齢でありたいという願いを唱える。イスラム教の聖地メッカのモスクの中心カーバには,大天使ガブリエルからアブラハムに与えられたと伝えられる黒石が,〈神の地上における真の右手〉としてまつられているが,このような〈神石〉の崇拝の歴史は人類とともに古い。古代の小アジアでも,フリュギアの大女神キュベレは,黒石を神体としていたが,その石が第2次ポエニ戦争の最中の前204年に,はるばるローマまでもたらされ,ハンニバルの猛攻から国を救った女神として,古代ローマ人の崇拝を受けることになった。…

【メッカ】より

…近年の巡礼時には200万人を超える巡礼者を全世界から迎える。町の中心にカーバがあり,それを囲んで広大な聖モスクal‐Masjid al‐ḥarāmがある。市街全域も含めて1辺が30km程度ある菱形の地域が聖域とされ,そこでの流血が禁じられ,異教徒の立入りも禁じられている。…

※「カーバ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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