殯宮(読み)ヒンキュウ

デジタル大辞泉 「殯宮」の意味・読み・例文・類語

ひん‐きゅう【×殯宮】

天皇皇族の棺を埋葬の時まで安置しておく仮の御殿。もがりのみや。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「殯宮」の意味・読み・例文・類語

ひん‐きゅう【殯宮】

  1. 〘 名詞 〙 天皇・皇族のひつぎを本葬の日まで仮に安置しておく御殿。あらきのみや。もがりのみや。
    1. [初出の実例]「為殯宮」(出典続日本紀‐大宝二年(702)一二月乙卯)
    2. [その他の文献]〔儀礼‐既夕礼〕

あがり‐の‐みや【殯宮】

  1. 〘 名詞 〙あらきのみや(殯宮)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「殯宮」の読み・字形・画数・意味

【殯宮】ひんきゆう

かりもがりの建物。清・鶚〔亡姫を悼む、十二首、四〕詩 ほ是れ踏(たふせい)、湖の路 殯宮の、斜(しやくん)に對す

字通「殯」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「殯宮」の意味・わかりやすい解説

殯宮(もがりのみや)
もがりのみや

仮埋葬の期間に行われる喪儀(殯)の宮。「あらきのみや」「あがりのみや」ともいう。殯は中国の葬送儀礼にもみえるが、『魏志(ぎし)』東夷伝(とういでん)倭人(わじん)の条には「始め死するや停喪十余日、時に当りて肉を食はず、喪主哭泣(こっきゅう)し、他人就(つ)いて歌舞飲酒す」とみえる。また『隋書(ずいしょ)』東夷伝倭国の条には「貴人は三年外に殯し、庶人は日を卜(ぼく)してうづむ」と記す。もがりはモアガリ(喪上)の約とする説が有力である。古代大王・天皇の場合、殯の行われた例としては、欽明(きんめい)、敏達(びだつ)、推古(すいこ)、舒明(じょめい)、孝徳(こうとく)、斉明(さいめい)、天智(てんじ)、天武(てんむ)、持統(じとう)、文武(もんむ)などの場合がある。殯宮では誄(しぬびごと)や歌舞などが献奏された。天武天皇の殯宮の喪儀は2年2か月に及び、持統天皇の場合は1年、文武天皇の例では5か月、元明(げんめい)天皇の殯宮の儀は6日となっている。その期間に長短がある。

上田正昭


殯宮(あらきのみや)
あらきのみや

殯宮

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

旺文社日本史事典 三訂版 「殯宮」の解説

殯宮
あらきのみや

古代,貴人の遺体を葬る前にしばらくの間安置しておく場所
「もがりのみや」ともいう。葬祭までは生前と同じく朝夕の食膳を供え,呪術的歌舞を行って霊魂をしずめた。646年の薄葬令や仏教の葬送儀礼・火葬の影響で衰え,元明天皇以後造られなくなった。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「殯宮」の意味・わかりやすい解説

殯宮 (あらきのみや)

(もがり)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「殯宮」の意味・わかりやすい解説

殯宮
あらきのみや

「あがりのみや」「もがりのみや」ともいう。古代,天皇の死体を葬送まで安置して祀るところ。古くは喪屋 (もや) を造ってこれにあてたが,元明天皇以後は別に喪屋を造らず,正室または寺院などを用いた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の殯宮の言及

【殯】より

…殯の萌芽形態は,《魏志倭人伝》にすでに見えており,古代日本のみならず,中国南部から中部インド,メラネシア,ポリネシアなどに広く分布する複葬形式の一つと認められる。殯についてとくに注目されるのは,大王の没後,殯宮(もがりのみや)が新たに造営されて,殯宮の内や殯宮を取り囲む空間(殯庭(もがりのにわ))で,各種の諸儀礼が行われたことである。殯宮内では,女性の近親者や土師(はじ)氏,遊部(あそびべ)などが,亡き大王に奉仕する私的儀礼の側面が濃いのに対し,殯庭で繰り広げられる歌舞や誄(しのびごと)の奏上には,亡き大王,さらには新しい大王継承者に対する服属の誓約といった公的儀礼の色彩が濃厚である。…

【霊屋】より

…多くは檜皮葺き(ひわだぶき)の屋であった。霊屋は《日本書紀》に殯宮(もがりのみや)とか殯殿とか喪屋(もや)と書かれているものと,基本的には同じものである。この中で遊部(あそびべ)が死者に付着する凶癘魂(きようれいこん)を鎮める儀礼をした。…

【殯】より

…殯の萌芽形態は,《魏志倭人伝》にすでに見えており,古代日本のみならず,中国南部から中部インド,メラネシア,ポリネシアなどに広く分布する複葬形式の一つと認められる。殯についてとくに注目されるのは,大王の没後,殯宮(もがりのみや)が新たに造営されて,殯宮の内や殯宮を取り囲む空間(殯庭(もがりのにわ))で,各種の諸儀礼が行われたことである。殯宮内では,女性の近親者や土師(はじ)氏,遊部(あそびべ)などが,亡き大王に奉仕する私的儀礼の側面が濃いのに対し,殯庭で繰り広げられる歌舞や誄(しのびごと)の奏上には,亡き大王,さらには新しい大王継承者に対する服属の誓約といった公的儀礼の色彩が濃厚である。…

※「殯宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

スキマバイト

働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...

スキマバイトの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android