改訂新版 世界大百科事典 「ナトリウムアミド」の意味・わかりやすい解説
ナトリウムアミド
sodium amide
化学式NaNH2。無色,潮解性の結晶性固体。融点210℃,沸点400℃。減圧下で昇華し,500℃で分解する。大気中の湿気で加水分解され,水と激しく反応してアンモニアと水酸化ナトリウムを生ずる。
NaNH2+H2O─→NH3+NaOH
熱エチルアルコール中でも分解する。空気中で熱すれば酸化されて水酸化ナトリウム,亜硝酸ナトリウム,アンモニアを生ずる。液体アンモニアにわずかに溶け,アンモノ塩基ammono-baseとして次式のように解離する。
NaNH2⇄Na⁺+NH2⁻
この解離は水溶媒系での塩基NaOHの解離NaOH⇄Na⁺+OH⁻に対比される。金属ナトリウムに300~350℃でアンモニアを作用させると得られる。
2Na+2NH3⇄2NaNH2+H2
アジ化物,シアン化ナトリウム,インジゴ,ヒドラジンなどの製造原料として用いられる。有機合成のさいの還元剤,縮合剤,脱ハロゲン剤のほか,液体アンモニア中で陰イオンNH2⁻を生ずることを利用してビニル化合物の陰イオン重合開始剤にも使用され,乾燥剤,脱水剤,ケイ酸塩の溶融分解試薬ともされる。
→液体アンモニア
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報