シアン化ナトリウム(読み)しあんかなとりうむ(英語表記)sodium cyanide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアン化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

シアン化ナトリウム
しあんかなとりうむ
sodium cyanide

ナトリウムのシアン化物。青酸ソーダ青酸ナトリウムなどといわれる。従来は金属ナトリウムアンモニアおよび木炭を原料とするカストナー法などが製造法の主流であったが、近年ではシアン化水素酸(青酸)が安価、多量に得られるようになったので、これを直接水酸化ナトリウム溶液に吸収させる方法が行われている。

  HCN+NaOH―→NaCN+H2O
そのまま液状品とするか、濃縮あるいは冷却固化して製品とされる。無色結晶性固体。潮解性で、水に溶けやすく、水溶液は強アルカリ性である。酸によって分解し、シアン化水素を発生する。アルカリ溶液中で塩素または次亜塩素酸ナトリウム溶液と反応してシアン酸ナトリウムと塩化ナトリウム(いずれも無毒)に変化する。この反応はシアン廃液の処理法として利用されている。鋼の熱処理、金、銀の精錬、金、銀、鉛などのめっき、農薬などに用いられるほか、有機合成の中間体の製造、各種シアン化合物の合成などに利用される。シアン化カリウムと同様、きわめて有毒で、一般に「青酸カリ自殺」のとき用いられるのは、実はシアン化ナトリウムであることが多い。

[鳥居泰男]



シアン化ナトリウム(データノート)
しあんかなとりうむでーたのーと

シアン化ナトリウム
NaCN
式量49.0
融点563.7℃
沸点1496℃
比重1.857(測定温度23.5℃)
結晶系立方(15℃以下では菱面体
溶解度34.2g/100g(水15℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シアン化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

シアン化ナトリウム
シアンかナトリウム
sodium cyanide

化学式 NaCN 。青化ソーダ,青酸ナトリウムともいう。市販品は 95~98%程度の純度をもつ。潮解性の無色粉末。激毒 (→青酸中毒 ) 。乾燥状態では無臭であるが,湿った空気中ではいくぶん潮解し,青酸臭を呈する。融点 564℃,沸点 1496℃。水に易溶,アルコールにいくぶん溶ける。水溶液は加水分解して強アルカリ性を示す。この溶液は空気の存在下で容易に錯塩をつくって,金,銀を溶解する。鉱石から金,銀を抽出するのに使われ,メッキ液用として広く使用される。果樹,船舶,鉄道貨車,倉庫などの薫蒸,シアン化水素や他のシアン化物の合成などに用いられる。

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