改訂新版 世界大百科事典 「クライゼン縮合」の意味・わかりやすい解説
クライゼン縮合 (クライゼンしゅくごう)
Claisen condensation
アルデヒド,ケトン,エステルなどのカルボニル基のα位に水素が存在する化合物(活性メチレン化合物)とカルボニル基を有する化合物の縮合反応の総称。1881年ドイツの有機化学者クライゼンL.Claisen(1851-1930)によって最初に報告されたので,この名が付けられた。通常,エステルが関与する場合の反応をいうことが多い。触媒量のナトリウムをアルコールに加えた溶媒系中で反応が行われる。たとえば,酢酸エチルは触媒量のナトリウムエチラートNaOCH2CH3の存在下,エチルアルコール中で2分子縮合し,アセト酢酸エステルを生成する。
このようなエステルどうしの反応は,クライゼンエステル縮合と呼ばれる。この反応を分子内で行わせると,環式β-ケト酸エステルが得られる。このような分子内反応は,とくにディークマンDieckmann反応と名づけられ,アジピン酸エステルより2-カルボエトキシシクロペンタノン合成は有名である。
クライゼンエステル縮合は1880年に見いだされたが,ディークマン反応はその後14年を経た94年に報告された。クライゼン縮合はケトンとエステルの間でも起こり,β-ジケトンが得られる。
触媒のアルコキシドのほかに,ナトリウムアミドNaNH2が優れていることが見いだされた。アルドール縮合もクライゼン縮合の一種である。パーキン反応やクネベナゲルKnoevenagel縮合も類似の反応で,工業的にも重要である。
執筆者:友田 修司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報