日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニキシ管」の意味・わかりやすい解説
ニキシ管
にきしかん
nixie tube
グロー放電を利用した表示放電管の商品名。1956年にアメリカのバローズ社によって商品化された。ニキシの名は、開発時に数字表示実験No.1と書くべきところをNIXIと書き誤り、それをニキシと読み慣らわしたことに由来する。構造は、数字、記号、文字などの形をした陰極を観視方向に複数個積み重ね、その前面に網状の陽極を設けたものである。陰極はステンレス鋼などを用い、管内にはスパッター(陰極飛沫作用)による陰極の損傷を防ぐために微量の水銀が封入されている。ある特定の陰極を選定し、陽極との間に電圧を加えると負グロー放電が陰極を囲み、陰極の形状に応じて0~9までの数などを発光表示する。字形の大きさは8~140ミリメートルとかなり大きいものまでつくられている。動作は最初は直流による駆動のみであったが、最近では時分割駆動も用いられている。駆動電圧は170~250ボルト、電流は1~25ミリアンペアで、輝度は130~200カンデラ/平方メートルのものがつくられている。ニキシ管は字形陰極を積み重ねた構造であることから、表示文字が前後する欠点がある。しかし、輝度が高く明るい、文字が読みやすい、寿命が長いなどの長所をもっているため、カウンター、デジタル計器などに多用されている。
[岩田倫典]