改訂新版 世界大百科事典 「ニッケル鉱物」の意味・わかりやすい解説
ニッケル鉱物 (ニッケルこうぶつ)
nickel mineral
ニッケルのおもな原料鉱物はペントランド鉱(硫化鉱物)とケイニッケル鉱(含水ケイ酸塩鉱物)である。超塩基性~塩基性マグマに含まれているニッケルは,マグマのケイ酸塩メルト(溶融物)と硫化物メルトへの分離が起こると,銅とともに硫化物メルトに入り,冷却して磁硫鉄鉱,黄銅鉱,ペントランド鉱の混合物となる。マグマが硫化物メルトを分離せず固結する場合には,ニッケルNi2⁺(イオン半径0.69Å)はマグネシウムMg2⁺(同0.66Å)との類似性からマグネシウムを含む鉱物(カンラン石(Mg,Fe,Ni)2SiO4等)に入る。このカンラン石等が風化作用を受けると,褐鉄鉱,蛇紋石となり,ニッケルはケイニッケル鉱中に入り,褐鉄鉱の下位に濃集する。ケイニッケル鉱の産地としてはニューカレドニア島が著名であり,その鉱石は日本へも送られ,おもに特殊鋼,ステンレス鋼などの原料フェロニッケルの製造に用いられている。またペントランド鉱はカナダのサドベリー鉱山が有名である。これらのほかにも多数のニッケル鉱物があり,少量ではあるが日本にも以下のものが産出する。紅ヒニッケル鉱niccolite NiAs(兵庫県夏梅(なつめ)ほか),硫ヒニッケル鉱gersdorffite NiAsS(同),針ニッケル鉱millerite NiS(大分県若山ほか),黄鉄ニッケル鉱bravoite (Ni,Fe)S2(同),ヒーズルウッダイトheazlewoodite Ni3S2(千葉県嶺岡ほか),アワル鉱Ni3Fe(同)。深海底のマンガン団塊中にもニッケルが含まれ,将来のニッケル資源として注目されているが,この中ではニッケルはMnO2を主とする鉱物中に含まれている。
執筆者:由井 俊三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報