日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペントランド鉱」の意味・わかりやすい解説
ペントランド鉱
ぺんとらんどこう
pentlandite
ニッケル・鉄の硫化鉱物の一つで、前者の重要な鉱石鉱物。一時硫鉄ニッケル鉱という名称もあったが、同じ成分で別鉱物のビオラル鉱violarite(化学式FeNi2S4)があるため、用いられなくなった。正マグマ性鉱床、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)中などに産するが、鉱床学的に重要なものは前者である。自形は正八面体をなすが、非常にまれである。日本ではそのほとんどが顕微鏡的なもので、兵庫県大屋町(現、養父(やぶ)市大屋町)夏梅(なつめ)鉱山(閉山)では磁硫鉄鉱と共存して球状集合をなし、京都府大江町(現、福知山(ふくちやま)市大江町)河守(こうもり)鉱山(閉山)では硫化物のみからなる鉱脈中に黄銅鉱、磁硫鉄鉱などと共存する。岩手県釜石(かまいし)鉱山(閉山)でも黄銅鉱、磁硫鉄鉱、キューバ鉱などとともに産する。英名はアイルランドの自然科学者ペントランドJoseph Barclay Pentland(1797―1873)にちなむ。
[加藤 昭 2018年7月20日]