翻訳|limonite
水酸化第二鉄を主成分とする不純な混合物の総称。化学式Fe2O3・nH2O。鉄鉱石となる。主成分鉱物は低結晶度の針鉄鉱やその含水非晶質相。成因的には、熱水性あるいは噴気性堆積(たいせき)起源のもの、初生硫化鉄鉱物の酸化によるもの、化学的堆積物起源と考えられるものなどがある。深海中のスモーカー(熱水からの沈殿物が堆積した煙突状の構造物)周辺の堆積物の中には普遍的に産する。日本では北海道虻田(あぶた)鉱山(閉山)、長野県諏訪(すわ)鉄山(閉山)、群馬県群馬鉄山(閉山)のものは長く採掘された。英名はギリシア語のλειμωυ(川沿いの草の生えた低地)に由来する。
[加藤 昭 2016年2月17日]
褐鉄鉱という名は元来2Fe2O3・3H2Oの組成をもつ含水酸化鉄鉱物に与えられた名前である。しかしその後,褐鉄鉱とされているものは吸着水をもつ非常に細粒な針鉄鉱からなることが判明した。現在,褐鉄鉱はその鉱物組成がよく知られていない天然の含水酸化鉄鉱物集合体の名として用いられている。黒褐色ないし黄色。モース硬度4~5.5,比重2.7~4.3。条痕は黄褐色ないし赤褐色。褐鉄鉱は黄鉄鉱などの鉄含有鉱物が地表で風化されて二次的に生成する。また沼沢地,湖底,浅海底などで鉄を含む水が酸化されて,褐鉄鉱層が生成する。最も有名な褐鉄鉱層はフランスのアルザス・ロレーヌ地域からルクセンブルクにかけて分布する魚卵状褐鉄鉱層で,その鉱石はミネットMinette鉱と呼ばれる。日本では第四紀火山地帯の温泉水から沈殿した褐鉄鉱鉱床が所々に知られ,北海道俱知安鉱山などがその例である。
執筆者:津末 昭生
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
吸着水をもつ水酸化鉄鉱物の総称.淡褐色ないし茶褐色で,皮殻状・しょう乳状や土状などを呈している.各種の酸化鉄や鉄を含む鉱物が風化を受けて鉱床をなしていることも多い.針鉄鉱の微細粒を主体とするものから,ゲル状のものまである.密度も含水量などにより,2.8~4.3 g cm-3 と範囲が大きい.温泉から沈殿したものもあり,鉱床の上部の焼けを形成していることもある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…通常は高炉内に投入して酸化鉄に結合している酸素とその他の脈石分を取り除き,鉄分を溶けた状態の銑鉄として取り出し鋼の原料とする。鉄鉱石を鉱物学の観点から分類すると多種類にのぼるが,製鉄原料として用いられる天然鉱物は赤鉄鉱(ヘマタイト,α‐Fe2O3),磁鉄鉱(マグネタイト,Fe3O4),磁赤鉄鉱(マグヘマイト,γ‐Fe2O3),褐鉄鉱(リモナイト,Fe2O3・nH2O,n=0.5~4)に代表される。とくに赤鉄鉱の産出量が全世界的にみて圧倒的に多く,日本への輸入鉄鉱石の中でもその約80%を占めている。…
※「褐鉄鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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