日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニューサイラン」の意味・わかりやすい解説
ニューサイラン
にゅーさいらん
New Zealand hemp
[学] Phormium tenax Forst.
ユリ科(APG分類:ススキノキ科)の常緑多年草。ニュージーランドの沼沢地原産で、ニュージーランドアサ、マオランともいう。地中の短い根茎から、長さ約1メートル、幅約5センチメートルの厚い剛直な剣形の葉を左右2列に広げる。夏、株の中央から葉より高い花茎を出し、上部は枝分れして、長さ4~5センチメートルの橙赤(とうせき)色花を多数開く。蒴果(さくか)は三稜(りょう)紡錘形で褐色に熟す。ニュージーランドではマオリ人が葉から繊維をとって利用しており、イギリス人がのちにこれを全世界の温・熱帯に広めた。白色の斑(ふ)入りの株(フイリニューサイラン)が観賞用に栽培される。日本には明治初期に導入され、北九州地方を中心に栽培が広まった。
株分けで殖やし、定植後3~8年目から収穫する。年に1、2回、新葉を2、3枚残してすべての葉を刈り取り、葉の繊維のみを精製する。繊維はマニラアサなどより柔軟で、弾力と光沢があり、腐りにくい。敷物、綱索、帆布、製紙原料とし、マニラアサやサイザルヘンプとの混紡にも用いられる。
[星川清親 2019年1月21日]