知恵蔵 の解説
ニュージーランド銃乱射事件(2019)
この襲撃事件が注目されたのは、「多民族共生」を掲げるニュージーランドで起こったことに加え、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用したことにある。タラント容疑者は事前にインターネットの掲示板でモスク衝撃を予告し、犯行声明文や自身のFacebookのアカウントも公表していた。広く注目を集め、移民排斥の主張を拡散させることが目的と見られる。更に襲撃の一部始終を自身のアカウントでライブ中継した。17分間の映像は約1時間後に削除されたが、またたくまに拡散された。フェイスブック社によると、犯行から24時間で約150万本を確認・削除したという。しかし、その後もYou TubeやTwitterへの転載が繰り返され、ネット上の監視・チェック体制やフィルタリングの限界を露呈することになった。
事件の翌日、事件現場を訪問したニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は記者会見を行い、「多民族共生」に基づく多様性の意義を強く訴え、更に数日後の閣議後、銃規制強化の方針も発表。議会もこれを受け、4月10日に軍仕様の半自動小銃や一部の散弾銃などの使用・流通を禁止する「銃規制改革法案」をほぼ全会一致で可決した。
(大迫秀樹 フリー編集者/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報