ねずみ男(読み)ねずみおとこ(英語表記)Rattenmann

改訂新版 世界大百科事典 「ねずみ男」の意味・わかりやすい解説

ねずみ男 (ねずみおとこ)
Rattenmann

S.フロイトによって,1909年《強迫神経症一例に関する考察》と題して発表された論文で報告されている神経症者の別名。この症例は強迫神経症の精神病理の理解に重要な意義をもつ。患者は当時29歳の独身青年で,知人から肛門ネズミを食いこませる〈ねずみ刑〉の話を聞いて以来,愛する父親と恋人がこの刑を受けたら大変だという恐怖に圧倒され,その恐怖をふり払うために,お祓いのような動作を反復するようになって,フロイトの治療を受けるに至った。フロイトは,彼の症状の背後に,自分の性愛活動の妨害者としての父に対する敵意と,この敵意を抑圧して愛情だけを意識する反動形成,思考の万能,疑惑癖,アンビバレンス,肛門期への退行などのあることを見いだして,強迫神経症の心理を解明した。
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世界大百科事典(旧版)内のねずみ男の言及

【フロイト】より

少年ハンス)は児童精神分析のさきがけであり,《強迫神経症の一症例に関する考察》(1909。ねずみ男)と《ある幼児期神経症の病歴より》(1918。狼男)とはともに強迫状態に関する考察,《症例シュレーバー》(1911。…

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