強迫神経症(読み)きょうはくしんけいしょう(英語表記)obsessive compulsive neurosis

  • (こころの病気)
  • Obsessive-compulsive disorder (OCD)
  • きょうはくしんけいしょう キャウハクシンケイシャウ
  • きょうはくしんけいしょう〔キヤウハクシンケイシヤウ〕
  • きょうはくせいしょうがい
  • 強迫性障害
  • 強迫神経症 obsessivecompulsive neurosis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

強迫症状を主症状とする神経症。不愉快な感情や非現実的想念が起り,その不合理性や非現実性は理解できるが,その理解に基づいて否定すればするほどさらに強く迫ってきて,どうにも処理できない状態に陥る。多くは不安感を伴い,自覚的にも病的と感じられる。たとえば戸締りやガス栓などを何回も確かめないと気がすまない確認強迫などはよくみられるものである。こういう症状を強迫症状 (あるいは強迫症候群) と呼び,健常者にもよくみられるが,それが精神的活動を束縛し,日常生活を妨げるようになった状態である。 10~20歳代に好発する。

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世界大百科事典 第2版の解説

強迫思考や強迫行為に悩んでいる状態で,精神病や脳器質性の障害を否定することができる場合をいう。強迫神経症という名称を理論的な根拠に基づいて使用したのはS.フロイトである。彼以前には,パラノイアと強迫状態との類似がもっぱら考えられており,フロイトがはじめて強迫とヒステリーとの共通点をあげて,これを神経症とみなしたのである。森田正馬は,強迫神経症をも彼のいう神経質の中に含め,その成立機制は,狭義の神経質の場合と同じく,ヒポコンドリー性基調と精神交互作用とからなるとする。

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大辞林 第三版の解説

神経症の一。自分で不合理だと思う考えや行為につきまとわれ、それを抑制することが困難な症状。 OCD 。 神経症という用語を避けて強迫性障害ともよばれる

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

非条理であることを患者自身よく知っているある観念(強迫観念)が意識を占有してしまい、そのばからしさに気づいて中断しようとするができないところから、正常な理性的判断とこの病的意識との闘いに悩み苦しむノイローゼの一種。器官神経症と区別し、精神神経症の一つとされている。強迫観念は、つまらない考えであることがわかっていながら頭にこびりつき、それを払いのけよう、あるいは忘れようとすればするほど、かえってより強く意識されるようになり、どうにもならない状態になるもので、強迫神経症では、患者はこの葛藤(かっとう)から逃れるために、ばからしさ、無意味さを承知しながら強迫的にある行動を繰り返す場合が多い。たとえば、手指に病原菌がついているのではないかという異常な観念のために、始終手を洗うといった強迫行為を繰り返すことなどがみられる。
 このように、強迫症状は強迫観念と強迫行為とに区別できるが、両者は互いに対(つい)をなすものが多い。単独にみられる場合には、しばしば脳障害の症状であることがある。[懸田克躬]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 自分でもわかる不合理な考えが、頭につきまとって離れず、払いのけようとすればするほど強く迫ってくる強迫観念と、これを解消しようと行う強迫行為からなる神経症。強迫性障害ともいう。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 自分の意に反して、不安あるいは不快な考えが浮かんできて、抑えようとしても抑えられない(強迫観念(きょうはくかんねん))、あるいはそのような考えを打ち消そうとして、無意味な行為を繰り返す(強迫行為(きょうはくこうい))。このような症状を強迫症状といいますが、強迫神経症は、強迫症状を主症状とする神経症の一型です。

 自分でもそのような考えや行為は、つまらない、ばかげている、不合理だとわかっているのですが、やめようとすると不安が募ってきて、やめられないのです。不安が基礎になっている病気なので、不安障害に分類され、強迫性障害(現在ではこのほうが正式)と呼ばれます。

原因は何か

 神経症の一型ですが、神経症の原因とされる心因(心理的・環境的原因)よりも、大脳基底核(だいのうきていかく)辺縁系(へんえんけい)など、脳内の特定部位の障害や、セロトニンやドーパミンを神経伝達物質とする神経系の機能異常が推定され、発症メカニズムとして有力視されています。ストレスフルな出来事のあとで発症することもありますが、多くは特別なきっかけなしに徐々に発症してきます。

 また、もともと几帳面(きちょうめん)、完璧主義などの性格(強迫性格)の人に多い傾向があります。

症状の現れ方

 強迫観念や強迫行為の内容にはさまざまなものがあります。よくみられるのは、

・敵意や衝動に関するもの:たとえば「誤って他人を傷つけたり殺してしまったりしやしないか」などの強迫観念

・不潔や汚れに関するもの:「便、尿、ばい菌などで汚染されたのではないか」などの不潔恐怖を伴った強迫観念、そのため人に近づけない、物に触れないなどの回避行動、触ったあとに何度も手を洗う強迫行為(洗浄強迫)

詮索癖(せんさくへき):些細なことの理由などをしつこく詮索し、時には質問してまわる

・疑惑癖:自分のしたことが完全だったかどうか、絶えず疑惑が生じてきて何度も確かめないと気がすまない(確認強迫)

・計算癖:物の数や回数が気になって、数えないと気がすまない

などです。

 自分で確認するだけでは安心できず、他人、多くの場合、母親などに何度も確認させ、保証を求める「巻き込み型」(他人を巻き込むという意味)といわれるタイプもあり、重症の患者さんに多くみられます。

 強迫神経症の経過は一般に慢性で、青年期に発症してよくなったり悪くなったりしながら、年余にわたって続くのが普通です。また、半数以上にうつ病が合併してくることも特徴で、そうなると患者さんの苦痛はより大きなものとなり、自殺の危険などへの注意も必要になってきます。

検査と診断

 強迫症状はうつ病統合失調症(とうごうしっちょうしょう)など、他の精神疾患でもみられるため、それらとの鑑別が必要です。脳炎、脳血管障害てんかんなど、脳器質性(のうきしつせい)疾患でもみられるので、これらが疑われる場合は鑑別のための検査(血液・髄液(ずいえき)などの検査、頭部CT、MRIなどの画像検査、脳波検査など)が必要になります。

 薬物やギャンブルへの依存症(いぞんしょう)も、「やめなければいけないとわかっていながら、やめられない」という点では強迫性障害に似ていますが、依存症ではその行為に快感を伴うのに対し、強迫性障害では快感はなく苦痛のみである点が異なっています。

治療の方法

 治療法には、薬物療法と精神療法があります。

 薬物ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:フルボキサミン〈デプロメール、ルボックスなど〉)、クロミプラミン(アナフラニール)、ベンゾジアゼピン誘導体(クロナゼパム:リボトリール、ブロマゼパム:レキソタンなど)、症状が重い場合は少量の抗精神病薬も用いられます。有効率は50%前後です。

 精神療法では、「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」と呼ばれる認知行動療法が有効です。強迫症状が出やすい状況に患者さんをあえて直面させ、かつ強迫行為を行わないように指示し、不安が自然に消失するまでそこにとどまらせるという方法です。適応が限られ、まだ専門家が少ないのが難点ですが、薬物と同等以上の効果があるといわれています。

病気に気づいたらどうする

 症状に気づいたら精神科を受診しましょう。うつ病統合失調症の初期や、他の病気の可能性もあるので、専門的な診断や検査が必要です。

 家族や身近な人は、患者さんの症状を理解してあげてください。「なぜ、そのようなつまらないことを気にするのか」と思うかもしれませんが、気になること自体が病気なのです。本人の苦痛ははたで見るより深刻で、うつ病を伴いやすいことにも注意が必要です。

関連項目

 うつ病統合失調症

竹内 龍雄

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典内の強迫神経症の言及

【アンビバレンス】より

…もし愛しか存在していないなら,恋人が別の人に走っても,その幸福を願うはずだから。このような自責や嫉妬は一応正常のうちに入れてもいいが,恐怖症や強迫神経症などの症状は,アンビバレンスを解決しようとする失敗した試みと考えられる。たとえば動物恐怖は,父親なら父親に対する憎しみを抑圧してある種の動物に振り向け,その動物の復讐を恐れているのである。…

【神経症】より

…さまざまな身体的愁訴がみられる。(3)強迫神経症 強迫思考,強迫行為などの強迫体験を主症状とする。すなわち,不合理でばかばかしいと知りながら,ある思考や行為を繰り返さずにいられない。…

【ねずみ男】より

…S.フロイトによって,1909年《強迫神経症の一例に関する考察》と題して発表された論文で報告されている神経症者の別名。この症例は強迫神経症の精神病理の理解に重要な意義をもつ。…

※「強迫神経症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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