改訂新版 世界大百科事典 「ノーズフルート」の意味・わかりやすい解説
ノーズ・フルート
nose flute
歌口に鼻孔を押しつけ,鼻息で吹き鳴らすフルートの総称。鼻笛ともいう。縦笛や横笛のほかに,ひょうたんを用いた球型笛など多種の形式のものがある。古い民間信仰には,鼻息に人間の霊魂が宿っていると考えることがあるが,ノーズ・フルートはこの信仰と深く結びついていると思われる。特にオセアニアでは豊作を祈る儀式との関連が強い。一般には片方の鼻孔だけを用い,ポリネシアでは右の鼻孔,メラネシアでは左の鼻孔が使われる。使わない方の鼻孔は指でおさえて吹く。例外的に両鼻孔を用いてダブル・フルートを吹く例がインドに見られる。最近まで五大陸のすべてに分布していたが,中心はオセアニアであり,ヨーロッパでは,ユーゴスラビアのマケドニアに見られるだけである。珍しい例としては,ニュージーランドのマオリ族がかつて用いた人骨のノーズ・フルートがある。
執筆者:柿木 吾郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報