日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイドリヒ」の意味・わかりやすい解説
ハイドリヒ
はいどりひ
Reinhard Heydrich
(1904―1942)
ナチス・ドイツの高官。1932年ナチス親衛隊(SS)に入り、保安諜報(ちょうほう)部(SD)を創設、責任者となる。ナチス政権成立後、国家秘密警察(ゲシユタポ)GestapoとSDが統合されると双方の組織を掌握、39年この組織が国家保安本部(RSHA)と改称されると初代長官に任命され、ナチスのテロ支配の総元締めとなった。42年1月、ワンゼー会議でユダヤ人絶滅のための「最終解決」が決定されるとその担当責任者に任命され、残忍な方法でユダヤ人の駆り集めを開始した。ボヘミア・モラビア(チェコ)保護領総督代理を兼ねていたが、42年5月、プラハ近郊でレジスタンス・グループの襲撃を受け、1週間後に死亡した。ハイドリヒの死後の6月10日、ドイツ軍は報復としてプラハ近くの寒村リディツェの住民全員を銃殺ないし強制収容所に送り込み、全村を焼き払い、ナチス・ドイツの残虐行為の代表的事件として広く知られるに至った。
[藤村瞬一]