改訂新版 世界大百科事典 「ハガレセンチュウ」の意味・わかりやすい解説
ハガレセンチュウ (葉枯線虫)
chrysanthemum foliar nematode
Aphelenchoides ritzemabosi
アフェレンコイデス科のセンチュウ。キクなどの葉を枯らすセンチュウで,英名はこれによる。体長0.7~1.2mm,雌雄同形で細長く,水中で活発に泳ぐ。枯葉の中で3年以上生存し,低温にも強い。秋から冬に寄生を受けた地際部の芽は春先の萌芽が悪い。センチュウの感染は下葉から始まり,気孔から侵入したセンチュウは柔組織を破壊するが皮層組織は破壊せず,葉脈で行動をさえぎられるために,やや水ぶくれ状の褐変が葉脈に区切られた形で進行する。植物体が雨や露でぬれているときにセンチュウは茎を伝って上昇し,上部の葉へ移っていく。このためキクは下葉から枯れ上がって落葉し,立枯状になる。センチュウの感染を防ぐためには密植を避け,植物体をなるべく乾いた状態に保つことが基本である。挿木は健全な個体を選び,秋~冬には地上の枯葉を焼却するなど,衛生に留意する。薬剤散布も有効であるが,葉が黄色くなってからではまにあわない。
執筆者:稲垣 春郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報