翻訳|parenchyma
柔細胞parenchymatous cellからなる植物の組織をいう。茎・根の皮層・髄,葉の柵状組織・海綿状組織,維管束の木部柔組織・師部柔組織,果実の果肉,塊茎・塊根その他の貯蔵組織などはすべて柔組織である。柔細胞にはさまざまな形のものがあるが,一般的には球形に近いものが多く,平均14面をもつといわれる。柔細胞はタンパク質など内容が多く,細胞壁はふつう一次壁だけでうすく,生理的な活動を活発に行う。柔細胞相互のあいだには,細胞壁を通して細い原形質連絡があり,この部分で隣接する2細胞の小胞体が連絡しあっている。この糸状の部分の直径はわずかに数十nmという細さであるから,その機能についてはまだ十分には確認はされていない。しかし,低分子の有機物質は通過できると考えられ,生長ホルモンなどもこの部分を通して移動が可能とみられる。このようにして,細胞間の物質の移動には細胞膜(原形質膜)を通して行われる移動のほかに,原形質連絡の役割を考える必要がある。一方,柔組織を構成する細胞間には多くの場合多少なりとも細胞間隙(かんげき)が存在し,その間隙には空気があって空気間隙となっていることが多い。空気間隙のうち,葉の柵状組織・海綿状組織からなる葉肉組織に存在するものは,気孔を通して外界と連絡している。葉肉組織の細胞は光合成,呼吸そして蒸散を行うが,いずれの場合にも,細胞が接している空気間隙が気体の交換に役だつ。一方,茎や根の皮層を構成する細胞間,とくに根の皮層には空気間隙が多い。植物体の表面が空気に接している地上部に対して,土壌に表面が接している根では,呼吸のための空気を得にくい状態にあると考えられ,皮層に存在する空気は根の組織の呼吸に役だつと考えられている。柔組織は一般に柔らかく,動物の食用となる部分には柔組織の部分が多い。果実,いわゆる“いも”といわれる貯蔵器官,そしてホウレンソウなどの葉は柔組織の割合が多い。
執筆者:原 襄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
柔細胞からなる植物組織のことで、高等植物の基本組織の大部分を占め、茎や根の皮層や髄、葉の葉肉、果実の果肉といったあらゆる器官にみられる。また、柔組織は維管束の木部や篩部(しぶ)にも構成要素として存在する。コケ植物その他の下等植物の体はすべて柔組織からなっている。柔組織には多少とも細胞間隙(かんげき)が存在し、柔組織の構成要素である柔細胞の形はさまざまであるが、一般に細胞壁が薄く、原形質および発達した液胞をもつ生きた細胞である。柔組織は植物体内で占める位置によってその起源は異なり、それぞれ茎頂や根端などの頂端分裂組織、前形成層、形成層、葉縁分裂組織といった分裂組織に由来するが、やがて分化成熟し、永久組織となって各種の重要な生理作用を営むこととなる。そのおもなものは、光合成に関与する同化組織、多肉植物に特徴的な貯水組織、塊茎・塊根・果肉・胚乳(はいにゅう)などのように栄養分を蓄える貯蔵組織などである。また、タンニン、樹脂、精油、ゴム質、乳液、粘液などを分泌する分泌組織または分泌細胞も含まれる。柔細胞は分化成熟後も、なお細胞分裂の能力を潜在的に保持しているが、分裂後、柔細胞としての性質を失って他の組織に再分化することがある。たとえばコルク形成層、離層、側根などといった他の組織への分化は、植物体の通常の成長過程における柔組織内で認められるものである。植物体が傷を受けるとその傷はふさがるが、これは柔組織内に癒傷組織が形成されるためである。また髄などの柔組織を切り取って培養すると、活発な細胞分裂の結果、根や茎などの器官が分化することも知られている。
[相馬研吾]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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