日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハドリアヌスの長城」の意味・わかりやすい解説
ハドリアヌスの長城
はどりあぬすのちょうじょう
Hadrian's Wall
イギリスにある古代ローマの長城。ローマ皇帝ハドリアヌスがブリタニア(現在のイングランド)北部に築かせたもの。122年着工、126年完成。西はソルウェー湾から東は北海に近いウォルゼンドまで延々118キロメートルに及ぶ。前面に幅約8メートルの堀を備え、城壁は当初は一部土塁であったが、のちに完全に石造に改められ、高さ約4メートル半、幅約2メートル半あった。途中に15の城塞(じょうさい)、そして約1475メートルごとに守備兵のための塔、さらに各塔の間に二つずつの小塔を設けてあった。保存状態がもっともよいのは、カーライル市東方のグリーンヘッドからソウイングシールズの間で、古代の姿が十分想像できるだけの原形をとどめている。1987年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。なお、2005年にドイツのリーメスLimes(ローマ帝国の辺境防塁)が区域を拡大して世界遺産に登録され、ハドリアヌスの長城を含め登録名が「ローマ帝国の国境線」に変更された。
[紅山雪夫]