日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナナガムチヘビ」の意味・わかりやすい解説
ハナナガムチヘビ
はなながむちへび
green whip snake
[学] Ahaetulla nasuta
爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目ナミヘビ科のヘビ。インド、スリランカ、東南アジアに分布し、全長1.3~1.9メートル。毒性の弱い後牙(こうが)類で性質もおとなしく、人間に危険がない。まったくの樹上性で胴も尾も極端に細長い。吻部(ふんぶ)が細長く、瞳孔(どうこう)は横長の特殊な形態で、両眼の視野が前方で交差して獲物を立体的にとらえることができる。体色は鮮やかな黄緑色で保護色となり、頸部(けいぶ)を膨らませて威嚇すると、隠れていた青緑色と白色の斑紋(はんもん)が現れる。餌(えさ)はおもにトカゲ類である。卵胎生で3~22頭の子ヘビを産む。
このハナナガムチヘビ属にはアジア南部産の8種が含まれるが、熱帯・亜熱帯アメリカには、本属と形態・生態ともに類似したエダヘビ属Oxybelis4種が分布し、樹上ではまったく枝と区別がつかない。なおムチヘビにはほかに、地上性で類縁の異なるアメリカムチヘビ属Masticophisやムチヘビ属Coluberがあり、すべて英名はwhip snakeという。
[松井孝爾]