瞳孔(読み)ドウコウ(英語表記)pupil

翻訳|pupil

デジタル大辞泉 「瞳孔」の意味・読み・例文・類語

どう‐こう【瞳孔】

眼球の虹彩こうさい真ん中にある円形の小孔。光線が入る所で、虹彩にある瞳孔括約筋瞳孔散大筋の相対的な働きによって大きさが変わり、光の量を調節する。ひとみ
[類語]黒目

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精選版 日本国語大辞典 「瞳孔」の意味・読み・例文・類語

どう‐こう【瞳孔】

  1. 〘 名詞 〙 眼球の中央部で虹彩に取り囲まれた黒い部分。光がこの部分を通って眼底網膜に対し、視覚を生ずる。目にはいる光量を調節し、映像を鮮明にさせる機能をもち、光が多ければ小さく、少なければ大きく開く。ひとみ。
    1. [初出の実例]「其神経症は頭痛・眩暈・昏睡・瞳孔散大等を発し」(出典:七新薬(1862)六)

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改訂新版 世界大百科事典 「瞳孔」の意味・わかりやすい解説

瞳孔 (どうこう)
pupil

いわゆる瞳の部分で,角膜を通して外から茶色に見える虹彩の中央にある円形の小孔をいう。発生学的には,眼球腔中に円盤状の薄い膜として存在する虹彩のほぼ中央に,眼球内へ光を入れるために丸い孔があいたものである。明るいところでは,瞳孔を小さくし(これを縮瞳miosisという),眼球内に入ってくる光の量を少なくする。暗いところでは,逆に瞳孔を大きくし(これを散瞳mydriasisという),眼球内に入ってくる光の量を多くする。縮瞳は瞳孔括約筋(副交感神経支配)の収縮,または瞳孔散大筋(交感神経支配)の弛緩によって起こり,散瞳は瞳孔散大筋の収縮,または括約筋の弛緩によって起こる。瞳孔の働きは,その運動によって眼球内に入る光線の量を加減し,眼球の光学系の焦点深度を調節し,角膜や水晶体によって起こされる球面収差や色収差を減少させる。このようにして眼底に写る像を明りょうにし視機能を高めている。瞳孔の大きさは,成人で明所では直径約4mmであるが,新生児と老人では小さく約2mmとなる。このほか,はっきり目覚めているときは疲れたときや眠いときより大きく,睡眠時には強い縮瞳が起こる。一般に,近視眼の瞳孔は大きく,正視眼遠視眼と順次小さくなる傾向がある。瞳孔が縮小する瞳孔反応には,光が眼球内に入って縮瞳する対光反応のほか,近いところのものを見るときに縮瞳する輻輳(ふくそう)反応あるいは近見反応がある。瞳孔の異常には,大きさ,運動,位置や形の異常がある。また左右の瞳孔の大きさが異なるとき,とくに瞳孔不同と呼んでいる。これらの異常は,眼の局所の障害だけでなく,視神経炎脳腫瘍といった,中枢神経系の障害でもみられる。また,子どもの瞳孔が黒く見えず白く見えることを〈白色瞳孔〉というが,これは網膜芽細胞腫先天性白内障,進行した未熟児網膜症などでみられる。
目/眼
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「瞳孔」の意味・わかりやすい解説

瞳孔
どうこう

眼球内をのぞき込むと、中央部からやや鼻側に円形の黒色部分が見える。これが瞳孔である。一般には瞳(ひとみ)ともいう。瞳孔は周囲を取り巻く虹彩(こうさい)によってできる。虹彩は目を包む脈絡膜が伸びた部分で、個体によってその色がさまざまなことからこの名前がある。欧米人では虹彩がしばしば青色に見える。虹彩は輪状の収縮性円盤で、この中にある瞳孔括約筋と瞳孔散大筋の相対的な働きによって、瞳孔の大きさや形は自律的に変化する。その変化は直径2~6ミリメートルほどである。正常人では瞳孔の大きさは左右同大であるが、不同の場合もある。瞳孔の大きさが左右著しく不同の場合、瞳孔不同といい、これには先天的な場合と後天的な場合とがある。後天的には散瞳薬や縮瞳薬などを片方の目に使用した場合とか、緑内障、虹彩癒着、あるいは脊髄癆(せきずいろう)や進行麻痺(まひ)などのような全身的疾患の際にしばしばみられる。発生的にみると、胎生6か月までは瞳孔も瞳孔膜で閉ざされている。瞳孔膜は水晶体前部を覆う血管包である。6か月以降になると瞳孔膜は萎縮(いしゅく)消失する。しかし、この瞳孔膜が出生時にも残ると瞳孔の先天的閉鎖となる。

[嶋井和世]


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百科事典マイペディア 「瞳孔」の意味・わかりやすい解説

瞳孔【どうこう】

瞳(ひとみ)とも。眼球内部の前面で,虹彩(こうさい)に囲まれた孔。その大きさは,瞳孔括約筋,瞳孔散大筋の働きによる虹彩の伸縮で調節され,眼球内に入る光の量が加減される。この調節は光の強弱によって反射的に行われ,ヒトの瞳孔の直径は2〜6mmの範囲。
→関連項目角膜眼筋瞳孔散大瞳孔縮小網膜芽細胞腫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「瞳孔」の意味・わかりやすい解説

瞳孔
どうこう
pupil

眼球の正面で虹彩に囲まれた中膜正面の小孔。ここから光が入り,網膜に達する。光の強さによって,大きさが変り,眼内に入る光量を調整して網膜を保護するとともに,鮮明な像を結ばせる。小さくなることを縮瞳,大きくなることを散瞳という。直径は通常2~6mm。縮瞳は,瞳孔に光が入るとき (対光反応) ,近距離の物体を見るとき (輻輳反応) ,瞼裂を閉じるとき (閉瞼反応) などに起り,反対に驚いたときなどには散瞳する (反射性散瞳) 。これらの反応を総称して瞳孔反応といい,瞳孔反応が起るときにも,もとに復するときにも長時間を要するものを瞳孔緊張症という。これに膝蓋腱反射やアキレス腱反射の消失を伴うものはアディー症候群という。また,瞳孔反応の消失した状態を瞳孔強直と呼んでいる。瞳孔反応の異常は,それ自体の異常のほかに,中枢神経系の変化を知る指標としての意義が大きい。

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レーシック関連用語集 「瞳孔」の解説

瞳孔

瞳の中心にある、黒い部分。周りを囲む、虹彩が伸び縮みすることで、瞳孔の大きさが変わり、眼に入る光の量を加減します。

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普及版 字通 「瞳孔」の読み・字形・画数・意味

【瞳孔】どうこう

ひとみ。

字通「瞳」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の瞳孔の言及

【虹彩】より

…虹彩実質は粗な結合組織の網目で,中に血管と色素細胞が埋まっている。虹彩色素上皮は外胚葉由来のもので,元来は2層だが,前層は瞳孔散大筋に分化し,後層だけにみえる。虹彩に接してすぐ奥には水晶体がある。…

【瞳孔反射】より

…瞳孔の大きさを散大させたり縮小させたりする反射。瞳孔は虹彩の中心にある小孔で,その大きさは瞳孔を環状にとりまく瞳孔括約筋と放射状に走る瞳孔散大筋の作用によって変化する。…

【目∥眼】より

…また脈絡膜の前縁は小さなひだ状の毛様体となり,透明な繊維でできたチン小体を介して水晶体に連なる。一方,毛様体から水晶体の前方に虹彩(こうさい)がのび,瞳孔(どうこう)が形成される。網膜には視細胞やその他の神経要素があり,視覚情報処理の一部がここで行われる。…

※「瞳孔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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