改訂新版 世界大百科事典 「ハリアリ」の意味・わかりやすい解説
ハリアリ (針蟻)
ponerine ant
膜翅目昆虫科ハリアリ亜科Ponerinaeに属する昆虫の通称。全世界に分布し,とくに湿潤な熱帯地方には多くの種類が分布している。日本産のものはノコギリハリアリAmblyopone silvestrii,ワタセハリアリProceratium watasei,オオハリアリBrachyponera chinensis,メクラハリアリCryptopone sauteri,アギトアリOdontomachus monticolaなど13属約30種類。見かけ上の腹柄は1節で,雌アリと働きアリは尾端に毒針を備えている。肉食性が強く,小昆虫などを食料とするが,ふつうのアリのように口移しで幼虫を養わず,食物を幼虫のそばに置いて直接食べさせる。ノコギリハリアリは小型のムカデ類を専門に狩り,ワタセハリアリはクモやムカデの卵を集めるなど,特殊な食物選択を行っている種類もある。
ハリアリのうち人を刺すことのできるものは限られていて,日本では鉱山の中にオオハリアリが発生し被害があった例が知られている。ふつうハリアリに刺された痛みはハチ類ほどでなく,持続時間も短いが,南アメリカ産のパラポネラ属Paraponeraのような大型のハリアリの中には気の遠くなるような痛みが起こるものがある。また,人を刺すことのできるアリはハリアリ以外にも多く,オーストラリア産のキバハリアリ属Myrmecia(キバハリアリ亜科),南北アメリカに分布するアメリカナガアリ属Pogonomyrmex(フタフシアリ亜科),インドから東南アジアに分布するムネアカナガフシアリTetraponera rufonigera(ナガフシアリ亜科)などは,刺されたときの痛さで有名。
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報