口移し（読み）クチウツシ

デジタル大辞泉

くち‐うつし【口移し】

１ 飲食物などを自分の口に含んでから、相手の口に直接移し入れること。「口移しに薬を飲ませる」
２ 口頭で言い伝えること。口伝え。口授くじゅ。「口移しに教えられる」

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

くち‐うつし【口移・口写】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 飲食物を自分の口から相手の口へ移し入れること。
   1. [初出の実例]「水を含み、口移(クチウツ)し飲ますれば」(出典：歌舞伎・成田山分身不動（1703）三)
3. ② 水などを、桶(おけ)などに口をつけて飲むこと。
   1. [初出の実例]「井戸側(ゐどばた)で釣瓶(つるべ)から口移(クチウツ)しにがぶがぶ水を飲んでゐた」(出典：茶話（1915‐30）〈薄田泣菫〉貧民視察)
4. ③ 言葉で直接に伝えること。口伝え。
   1. [初出の実例]「ただくちうつしに、男、誰が秋にあひて荒れたる宿ならむ我だに庭の草は生ほさじ、と言ひて」(出典：平中物語（965頃）三六)
5. ④ その人の口調や話の内容をそのまま言うこと。そのままの節回し。
   1. [初出の実例]「おなじやうに、くちうつしに道具ほめて」(出典：虎明本狂言・磁石（室町末‐近世初）)
   2. 「『人民』、『権力』いうようなことばは田村少年のほうから口移しで来たんでっしゃろけど」(出典：羽なければ（1975）〈小田実〉一三)

出典　精選版 日本国語大辞典