改訂新版 世界大百科事典 「バンブラー」の意味・わかりやすい解説
バンブラー
John Vanbrugh
生没年:1664-1726
イギリスの劇作家で数少ないバロック建築家。商人の子としてロンドンに生まれ,軍人となってフランスに渡る。一時スパイの嫌疑をかけられ,捕らえられていたが,この間に劇作を始めた。帰国後,社交界の乱れた男女関係を描いた《逆戻り》(1696初演)によって人気を得る。続いて《挑発された妻》(1697),《共謀》(1705)などの喜劇を発表し,王政復古期に始まるイギリス風習喜劇の代表作家の一人となる。作風は繊細さを欠くが,題材の処理に鋭さがある。牧師コリアーJeremy Collierが劇壇の退廃を攻撃したときには,W.コングリーブと並んで不道徳な作家の典型とされた。建築家としては,友人の第3代カーライル伯のためにカースル・ハワードの設計(1700)を行う。設計の専門的知識に関してはホークスムアの助力を得たが,代表作ブレニム宮殿(1725)の構成に見られるダイナミックなバロック的性格は彼自身の創案と考えられる。代表作には,上述のほかに,自邸バンブラー・カースル(1726),シートン・デラバル(1728)などのカントリー・ハウスがある。
執筆者:喜志 哲雄+鈴木 博之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報