日本大百科全書(ニッポニカ) 「コングリーブ」の意味・わかりやすい解説
コングリーブ(劇作家、詩人)
こんぐりーぶ
William Congreve
(1670―1729)
イギリスの劇作家、詩人。軍人の子としてリーズ近郊に生まれ、父の転属に伴ってアイルランドに移る。ダブリンのトリニティ・カレッジに学び、スウィフトと交わる。1688年イギリスに戻り、しばらく法律を学んだのち、小説『名を秘めた女』(1692)によって文壇に登場、ついで劇作に転じ、喜劇『独身の老人』(1693)によって好評を博した。その後、喜劇『二枚舌の男』(1693)、同『恋には恋を』(1695)、悲劇『喪に服する花嫁』(1697)を発表したが、喜劇『世の習い』(1700)が不評を被ったため、劇壇から事実上退いた。この間、いくつかの官職にもついたが、晩年は悠々自適の生活を送った。彼は詩や喜劇論も書いているが、もっとも高く評価されている作品は、王政復古期に始まるイギリス風習喜劇の伝統を継いだ上記の喜劇四編である。これらはいずれも社交界の風俗、とくに男女関係と財産をめぐる争いとを凝った比喩(ひゆ)や格言をちりばめた文体で機知豊かに描いたもので、とりわけ『世の習い』は風習喜劇の洗練を極めたものとされるが、筋があまりに複雑であるため批判されることもある。
[喜志哲雄]
『『福原麟太郎著作集8 評伝・コングリイヴ』(1969・研究社出版)』