改訂新版 世界大百科事典 「パラタングステン酸塩」の意味・わかりやすい解説
パラタングステン酸塩 (パラタングステンさんえん)
paratungstate
タングステン酸塩の一つ。十二タングステン酸塩dodecatungstateMⅠ10[W12O46H10]・nH2O(12WO3・5MI2O・nH2O)の通称。ポリタングステン酸塩のうち最も得られやすく,分析試薬などで通常タングステン酸塩と呼ばれているのはほとんどこれである。八面体形のWO6を単位とし,稜を共有する図に示すような多核錯体であるイソポリタングステン酸イオン[W12O46H10]10⁻が存在する。一般にタングステン酸アルカリ水溶液に酸を加えて微酸性にすると得られる。
アンモニウム塩(NH4)10[W12O46H10]・6H2Oは無色単斜晶系あるいは斜方晶系針状晶。乾燥空気中では結晶水を失う。100℃で無水和物となるが,さらに熱すると青色ないし黄色となる。冷水にわずかに溶ける。カリウム塩K10[W12O46H10]・6H2Oは光沢ある無色板状ないし柱状晶。空気中で安定。200℃以上で無水和物となる。融解すると黄色となり,分解して青色ないし緑色となる。冷水に難溶,温水には溶ける。ナトリウム塩Na10[W12O46H10]・23H2Oは無色で光沢のある板状ないし柱状晶。空気中で安定。100℃に長く熱すると無水和物となる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報