タングステン酸塩(読み)タングステンさんえん(その他表記)tungstate
wolframate

改訂新版 世界大百科事典 「タングステン酸塩」の意味・わかりやすい解説

タングステン酸塩 (タングステンさんえん)
tungstate
wolframate

酸化タングステン(Ⅵ) WO3の水溶液に生ずるオルトタングステン酸H2WO4,これが縮合して生ずるメタタングステン酸H6[H2W12O40]やパラタングステン酸H10[H10W12O46]など(ポリタングステン酸)の塩で,一般式xM2O・yWO3zH2Oで表される化合物。y/x=1のときがオルト,12/5がパラ,4がメタタングステン酸塩である。普通は最も簡単なオルトタングステン酸塩をさす。

 オルトタングステン酸塩M2WO4 アルカリ金属塩K2WO4,Na2WO4およびアンモニウム塩(NH42WO4は,無色結晶で,水に溶けてアルカリ性を示す。水溶液を酸性にするとイソポリタングステン酸塩を生ずる。酸性溶液にホウ酸,ケイ酸,リン酸,ヒ酸などを加えると反応して,それぞれのヘテロポリ酸塩を生ずる。たとえばリン酸の場合はリンタングステン酸塩,正しくはウォルフラマトリン酸塩(NH46[(PO4W9O272]となる。アルカリ金属以外の金属塩は一般に水に不溶である。CaWO4灰重石,FeWO4マンガンとの混晶鉄マンガン重石として天然に産する。CaWO4はカルシウム塩水溶液にNa2WO4水溶液を加えると得られる無色の結晶である。

 メタタングステン酸塩M6[H2W12O40],パラタングステン酸塩M10[H10W12O46]はともに水に可溶なものが多い。
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化学辞典 第2版 「タングステン酸塩」の解説

タングステン酸塩
タングステンサンエン
tungstate

一般式xWO3yM2Oで表される化合物.通常,xy = 1:1の,通称,オルトタングステン酸塩M2WO4をさす.このほかに,ポリ酸がある.代表的なイソポリ酸塩としては,xy = 12:5の,通称,パラタングステン酸塩(十二タングステン酸(10-)塩),xy = 4:1(12:3)のメタタングステン酸塩(十二タングステン酸(6-)塩)がある.さらに,P,Si,Bなどをヘテロ原子として取り込んだヘテロポリ酸もある.M2WO4型のアルカリ金属塩は,水酸化アルカリ水溶液にWO3を溶かし,濃縮すると得られる.ほかの金属の塩はアルカリ金属塩と各金属の水溶液から複分解反応で得られる.タングステン酸カルシウムCaWO4は,天然に灰重石として産出し,いわゆる灰重石構造で,正四面体型のWO42-をもつイオン結晶である.Mg塩,Li塩も正四面体型のWO42-をもつ.Na塩は,正八面体型のWO6からなる.アルカリ金属,NH4,Mg塩は水溶性であるが,ほかは難溶性のものが多い.オルト酸塩の水溶液を酸性にすると,酸イオンが縮合してポリ酸を生じる.ポリ酸(塩)は多種類あって構造も複雑であるが,多くのものが単離され,X線結晶解析で詳しく構造も調べられている.アルカリ金属塩は,媒染剤織物防火加工などに,アルカリ土類金属塩は蛍光体に,Pb塩,Ba塩などは顔料に,Cd塩は放射線検出用シンチレーターに用いられる.[CAS 13573-11-0:Mg塩][CAS 13568-45-1:Li塩][CAS 13472-45-2:Na塩][CAS 11140-77-5:NH4塩][CAS 7759-01-5:Pb塩][CAS 7787-42-0:Ba塩][CAS 7790-85-4:Cd塩]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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