改訂新版 世界大百科事典 「パンギノキ」の意味・わかりやすい解説
パンギノキ
pangi
Pangium edule Reinw.
アジアの熱帯に野生するか栽培されるイイギリ科の落葉高木。原産地はマレーシア地域。高さ10~40m,直径1mに達する。長い葉柄を有する葉は互生し,小枝の先端に集まり,心形で先端はとがり,大型で長さ20~60cm,裏面は脈上に褐毛を密生する。花は腋生(えきせい)で,雌花は単生,雄花は数個からなる総状花序につき,通常は雌雄異株。果実は卵形,長さ10~30cm,果肉は黄色のパルプ質でネギのような香りがあり有毒。種子は多数,卵状三角形で径約5cm。種子はシアン化物を含み有毒であるが,煮るかまたはつぶして流水に長時間浸すと食べられ,インドネシアでは多く用いられ,市場でも売られている。種子から採った油はマレーシアではヒチュン油,モルッカ諸島ではパンギ油と称して,料理用,灯火用,セッケンの製造などに用いる。樹皮は魚とり用の毒とされ,また肉や魚をこの葉で包むと新鮮な状態で保存されるという。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報