日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒシダイ」の意味・わかりやすい解説
ヒシダイ
ひしだい / 菱鯛
boar fish
[学] Antigonia capros
硬骨魚綱スズキ目ヒシダイ科に属する海水魚。福島県以南の太平洋岸と富山県以南の日本海沿岸、東シナ海、九州・パラオ海嶺(かいれい)、台湾、韓国、東南アジア、オーストラリア北西・北東海域、ハワイ近海、アフリカ沿岸などのインド・太平洋および西大西洋に広く分布する。体は著しく側扁(そくへん)してほぼ菱形(ひしがた)を呈し、体高が体長よりわずかに高い。背びれと臀(しり)びれは基底が長く、それぞれ菱形の上下頂点付近から始まる。また、両方のひれの基部には鱗鞘(りんしょう)がよく発達する。吻(ふん)は短く、小さな口は上向きに開く。体は美しい橙赤(とうせき)色。体長約25センチメートル。水深40~900メートルにすみ、機船底引網で、ときに多量に漁獲されるが、肉量が少なく利用価値は少ない。本科にはこの1属しかなく世界で10種ほど知られている。そのうち、日本には本種を含めて3種がいる。ベニヒシダイA. rubescensは、頭の背縁は目の上方で著しくくぼみ、口は水平に開く。ミナミヒシダイA. rubicundaはヒシダイに似るが、背びれと臀びれの軟条数が少ない。
[岡村 收・尼岡邦夫 2016年6月20日]