日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒッタイト法書」の意味・わかりやすい解説
ヒッタイト法書
ひったいとほうしょ
1906~07年に発見された楔形(くさびがた)文字で粘土板に記された法書。制作年代は紀元前14世紀ごろと推定され、法典ではないと考えられているが、200項目にわたってまとまりをもっており、『ハムラビ法典』や『アッシリア法書』とともに、当時の社会を知るのにきわめて重要なものである。公刑罰観念が読み取られ、他の楔形文字法と同じように階級刑法であり、自由人と奴隷と明確に区別されているが、タリオ(同害報復刑)はみられない。また、略奪婚や使用婚を推測させる法文もある。ヒッタイトは小アジアに現れた最古のインド・ヨーロッパ語族であるから、この法書は他のオリエント諸民族の法と比較するのに優れた素材を提供している。
[佐藤篤士]
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