少年世界(読み)しょうねんせかい

改訂新版 世界大百科事典 「少年世界」の意味・わかりやすい解説

少年世界 (しょうねんせかい)

少年読者を対象とした雑誌。1895年1月創刊,1933年10月終刊。博文館発行。日清戦争後の時運に乗り,それまで博文館が出していた数種類の雑誌,叢書などを統合して創刊された月2回刊の雑誌。当時,硯友社の新鋭として注目され,少年文学の創始といわれる《こがね丸》を書いていた巌谷小波主筆に迎えられた。小波は,つづいて創刊された《幼年世界》(1900創刊),《幼年画報》(1906創刊),《少女世界》(1906創刊)の主筆を兼ね,これらの雑誌を舞台に,児童雑誌の編集者として,またお伽噺作家として活躍をするが,中心は《少年世界》においていたようである。初期の小説欄には,江見水蔭川上眉山,泉鏡花,松居松葉堺枯川石橋思案若松賤子,山田美妙,徳田秋声田山花袋,尾上新兵衛(久留島武彦)などが執筆し,明治期を代表する児童雑誌にふさわしい内容を誇った。大正期の《日本少年》(1906創刊,実業之日本社),《赤い鳥》(1918創刊,赤い鳥社),そして昭和期の《少年俱楽部》(1914創刊,大日本雄弁会講談社)の登場によってその使命を終え,衰退した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「少年世界」の意味・わかりやすい解説

少年世界
しょうねんせかい

児童雑誌。1895年(明治28)1月創刊、1934年(昭和9)1月終刊。博文館発行。当初は半月刊、のちに月刊。同社発行の『幼年雑誌』『日本之少年』『学生筆戦場』『少年文学』『幼年玉手箱』などの合併から生まれた。そのため誌面構成も、論説、小説、学校案内、時事など多面にわたり、読者対象も多様であった。主筆巌谷小波(いわやさざなみ)のお伽噺(とぎばなし)、少女欄の若松賤子(しずこ)、小説欄の泉鏡花、徳田秋声らの作品、名作紹介として森田思軒(しけん)訳『十五少年』など、押川春浪(しゅんろう)、桜井鴎村(おうそん)らの冒険小説に人気があった。大正時代以後は他誌に押され、付録、大衆小説を呼び物とするに至る。

[大藤幹夫]

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世界大百科事典(旧版)内の少年世界の言及

【大橋佐平】より

…93年欧米視察に出発,ロイター通信社を訪問,通信の取次を約束して帰国,94年に内外通信社を設立した。95年に13種あった雑誌を廃刊,新たに《太陽》《少年世界》《文芸俱楽部》を創刊,糾合合併して発展にそなえた。97年に洋紙店博進堂,博進社印刷所(後の博文館印刷所),次いで1901年に創業15周年を記念して〈大橋図書館〉を設立したが,開館を目前にして死去した。…

【児童雑誌】より

…教育制度の普及,印刷技術の発達,資本主義の成長などの条件がととのうと,商業児童雑誌が刊行されるようになった。なかでも博文館の《少年世界》(1895)は,当時《こがね丸》を書いて爆発的な人気を得た巌谷(いわや)小波を主筆に,押川春浪ほか門下の新進作家が作品を書き,内容の新鮮さ,おもしろさという点で,他誌を大きくひきはなし,きわだった存在となった。同社の営利主義と主筆の知名度に依存するスター・システムによる雑誌づくりはその後も続き,最初の性別雑誌《少年界》《少女界》(ともに1902),年代別雑誌《幼年世界》(1900),《少女世界》が生まれた。…

※「少年世界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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