化学辞典 第2版 「ヒドラジニウム塩」の解説
ヒドラジニウム塩
ヒドラジニウムエン
hydrazinium salt
ヒドラジン N2H4(体系名はジアザン)に,H+ が1個または2個加わってできた陽イオンを含む塩.ヒドラジンの有機誘導体も同形式の塩をつくる.
(1)N2H5+塩は,ヒドラジニウム塩,またはヒドラジニウム(1+)塩,体系名はジアザニウム塩という.
(2)N2H62+塩は,ヒドラジンジイウム塩,またはヒドラジニウム(2+)塩,体系名はジアザンジイウム塩という.
なお,酸+ヒドラジンで示す通称がある.たとえば,[N2H6]SO4はN2H4・H2SO4と考えて,硫酸ヒドラジニウムという.ヒドラジンの一水和物と,各酸の反応で得られる.硫酸ヒドラジニウムは,工業的に直接アンモニアの酸化によるヒドラジンの製造(Rasching法)を経由してつくられる.固体では,N2H5+塩は [H2N-NH3]+(N-N約1.45 Å)を,N2H62+塩は [H3N-NH3]2+(N-N約1.40~1.42 Å)を含むイオン結晶で,前者のほうが得やすい.大部分の塩は安定で,無色の結晶として得られる.ほとんどの塩は水に易溶.上記の陽イオンは,水溶液中でも存在し,還元性がある.アルカリ性溶液は強い.NH4+との類似性があり,N2H5・Al(SO4)2・12H2O(ミョウバン型構造)などの複塩も得られる.[CAS 10034-93-2:N2H62+塩]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報