改訂新版 世界大百科事典 「アジ化水素」の意味・わかりやすい解説
アジ化水素 (アジかすいそ)
hydrogen azide
爆発性のある無色の液体。化学式HN3。アジ化アルカリの水溶液を酸で処理するか,ヒドラジンN2H4と亜硝酸との反応によって溶液として得られる。融点-80℃,沸点37℃,比重1.12。きわめて不安定で爆発しやすく,熱い物体にふれたり,振動その他で青色の炎を発して激しく爆発する。水,エチルアルコールによく溶ける。水溶液はアジ化水素酸と呼ばれ(古くトリアゾ水素酸とも呼ばれた),弱酸として働く。解離定数K=1.8×10⁻5(25℃)。毒性が強く皮膚を傷める。アジ化水素酸の塩はアジ化物と呼ばれ,金属水酸化物をアジ化水素酸に溶かしたり,アジ化物との複分解などによって得られる。アジ化物イオンN3⁻は直線型イオンであり,ハロゲン化物イオンとよく似た性質をもつため,ハロゲノイドの一種である。銀,鉛(Ⅱ),水銀(Ⅰ),タリウム(Ⅰ)などの塩が水に難溶性であるが,それ以外の塩は多くは水に溶ける。金属アジ化物は一般に不安定であるが,銀,鉛などをはじめとして多くの重金属の塩は爆発性である。
→アジド
執筆者:漆山 秋雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報